2008年12月08日

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『人間の覚悟』4

五木 寛之著  2008年11月20日発行  714円(税込)

人間の覚悟 (新潮新書)人間の覚悟 (新潮新書)
著者:五木 寛之
販売元:新潮社
発売日:2008-11
おすすめ度:5.0
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著者が有名な方ということもあり、評判もよくベストセラーになりそうな本です。著者の最近の本は仏教の影響が色濃く感じられる随筆が多く、本書も同様の印象を受ける本です。

長年に渡って数々のベストセラーを書かれただけあり、ページを開いただけで、文章を読まなくてもページ全体が整っている感じを受けます。使われている単語、改行の頻度、使われている漢字や平仮名などの割合も、そう感じさせるのかもしれません。



本書のテーマを一言で述べると「諦観」ということになると思います。諦観の背景には著者の無常観があると思いますが、これは著者の人生経験がかなりの影響を与えているようです。本書ではそのあたりも詳しく書かれています。

終戦時に平壌(現在のピョンヤン)にいて、終戦後に本土に帰る途中の経験などから、国や行政の言っていることは信用できないとされています。場合によっては、それらが伝えていることとは敢えて反対の行動を取るなどとも書かれています。

このときの経験については、本書の最初と最後の部分で二度にわたって書かれており、著者が心理的に大きな影響を受けた出来事であったことが想像できます。

本書で書かれているのは、戦争時の極端な体験ですが、国や行政の言っていることを当てにし過ぎない方がよいということは、平時の現在でも当てはまるようです。危機感が少ないだけによりわかりにくくなっています。

国や行政にかぎらず、本当の意味で当てにできるものはないため、最終的には人は孤独であるという無常さがあり、逆にそれを受け入れることによって自由になれるかもしれないのかもしれません。タイトルにある「覚悟」という言葉は、無常を受け入れる覚悟のようです。

著者が現在のような心境に至られたのは、人生経験に加え、老いも影響を与えているようです。諦観の境地に達することができるため、老いにも肯定的な意味合いを見いだされているようです。

本書がベストセラーになるとすると、日本という国が老いに向かっており、日本の国がその現実を受け入れて、新しい境地に達する必要があるからかもしれません。

ビジネス書は光の世界について書かれていることが多く、影の部分についてはあまり書かれていません。しかしながら、本書に書かれているような影の部分は逃れようがなく、多くの人は年齢を重ねるごとに受け入れざるを得ません。

本書は読み手によって感じ方がかなり異なってくる本であると思います。とくに年齢の違いが感じ方の大きな違いを生むと思います。



investmentbooks at 23:56│Comments(0)TrackBack(0)clip!本--人生指南 

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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