2008年12月14日

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『資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言』4

中谷 巌著  2008年12月20日発行  1785円(税込)

資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言
著者:中谷 巌
販売元:集英社
発売日:2008-12-15
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本書は著者の「懺悔の書」だそうです。著者は著名な経済学者で、グローバル資本主義に基づいた構造改革の「急先鋒たる一人」だったと御自身で本書に書かれています。

本書はどのようにして本書がアメリカを発信地としたグローバル資本主義に惹かれ、そして何を思って「転向」したかについて幅広い視点から述べられており、今後の日本が目指す方向性についても提言されています。



本書の目次は以下の通りです。

序章 さらば、「グローバル資本主義」

第一章 なぜ、私は「転向」したのか

第二章 グローバル資本主義はなぜ格差を作るのか

第三章 「悪魔の碾き臼」としての市場社会

第四章 宗教国家、理念国家としてのアメリカ

第五章 「一神教思想」はなぜ自然を破壊するのか

第六章 今こそ、日本の「安心・安全」を世界に

第七章 「日本」再生への提言

終章 今こそ「モンスター」に鎖を

いままでの著者の立場からすると、宗教的回心とでも言えるくらいの「転向」ですが、このように急に変化が生じるときは、おそらく「何となくおかしい」という時期が長く続いていることが多いと思います。

本書ではブータンやキューバを例に挙げて、国家としてのあるべき状態を模索されています。さすがに日本がブータンやキューバのようにこれから変わるわけにはいきませんが、ある程度の参考にはなるかもしれません。

カール・ポランニーの思想や、アメリカや日本の宗教的な側面についても考察がなされており、経済学的な面以外からの話が多いのですが、そのこと自体が本書の性質を表しています。

著者のような方が本書のような内容の本を出されることは、新自由主義に基づくグローバル資本主義が一つの極に達したことを表しているのかもしれません。これから揺り戻しが来るのでしょうが、難しいのは単に反対方向に戻ればよいわけではないということです。

歴史は繰り返す側面がありますが、現在は常に新しいとも言えます。地球上に本当の意味で新しいことはないかもしれませんが、全く同じ状況もありません。

今だから振り返ってグローバル資本主義が「間違いだった」と言うことができますが、当時はそうは言えなかったわけです。ある事柄の真偽は状況依存的です。そして真偽もはっきりしているものではありません。

おそらくグローバル資本主義の欠点は、経済が人間の日常的感覚、現実的感覚、原始的感覚から遊離しやすいことにあると思います。主義は観念的になる傾向があるので、過度になると身体性に乏しくなってしまいます。

現場で働いている人がマネーゲームに対して感じる違和感は、身体性の欠如に由来しますが、日本人はもともと日常の身体性を重視する文化と伝統を持っていました。著者が日本の固有の文化に多くのページを割かれているのは、身体性の復権を強調したいからだと思います。

学問は一般的に身体性が乏しくなりがちです。経済学はもともとは人間を日常的感覚において幸福にするための学問のはずですが、学問全般の性質として観念的になりやすく、観念は「暴走」してしまいます。今回のグローバル資本主義の「暴走」の一因はそのあたりにもあるのかもしれません。

現実世界にフィードバックされる学問は暴走すると、どこかで修正される時期が来ますが、経済学ほど人類全体に大きな影響を与える学問はありません。20世紀は経済的思想によって世界が二分されていました。

ちなみに医学については、医学はもともとは身体を扱っている学問でありながら、学問であるために身体性が乏しくなる傾向にあります。最近の診断は、体を診ているのではなく、体の情報から観念的になされます。身体を扱っていながら身体性が乏しくなるのは皮肉なことです。

身体性は暴走しませんが、観念は暴走します。学問がその世界全体をリードすると、観念には限界がないので暴走を止めることができません。暴走が止まるのは、現実生活におおきなマイナスが生じるほどの現象が起こってからであり、修正は身体性によってなされます。

結局のところ、グローバル資本主義の暴走は、身体性を無視した観念の暴走にその本質があると思います。この構造を理解しないと、本質的に同じようなことが今後も繰り返されることでしょう。

観念は暴走しやすいのですが、人間を大きく発展させることもできます。観念は否定されるものではなく、コントロールしてうまく付き合うべきものです。身体と観念の統合は人間に与えられた大きなテーマです。



investmentbooks at 23:54 │Comments(2)TrackBack(0)clip!本--世界経済 

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この記事へのコメント

1. Posted by donald    2008年12月15日 22:12
これ、出たばっかりの本ですよねえ。もう紹介されてるなんて凄いなあ。追っかけ読みたいと思います。

最近、リチャード・クー、野口悠紀雄、紺谷典子とか90年代に活躍したエコノミストの新刊が出てるなあと思ったら、今度は中谷巌の新刊、しかも「懺悔の書」とあるので「むむむ」という感じ。

現状に対する自分の大雑把な感覚は、90年代に日本経済システムの見直しが議論された後、21世紀に入ってからアメリカ式の小泉−竹中改革が進められたところに、金融危機を受けてアメリカ流は駄目だという思いが強まっている、ってところかな。

観念は暴走する。
マネーはまさに観念である。
ゆえにマネーは暴走する。
人間の欲望も多く観念的である。
ゆえに欲望も暴走する。
本当に、人間は自らの観念の扱い方について、もっと上手にならないといけないと思います。
2. Posted by bestbook    2008年12月16日 00:32
donaldさん、コメントありがとうございます。

本書は厚いのですが、読みにくい本ではありませんでした。著者の読みやすい文章の書き方も参考になりました。

お書きの通り、最近経済書の出版が目立ちますが、現在の状況はエコノミストであれば本を書きたくなる状況なのかもしれません。

現在は波の山か底の転換期なのかもしれません。本ではいろいろと書かれていますが、時代が転換して変化していくかもしれないのは楽しみでもあります。

観念についてはヒトはまだ上手く処理できるほど進化していないのでしょう。自然に任せていては気の遠くなるような時間がかかるので、ヒトが自分自身によっていかに「進化」していくかがこれからの人類のテーマだと思います。

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都内在住30代。10代より1日1冊のペースで本を読んでいます。以前は文学、哲学、思想、宗教関係の本を読んでいましたが、株式投資をきっかけに、ここ数年はビジネス書などを読み込んでいます。本の知恵によって、世の中が少しでもよくなればと思います。
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2006年12月開始。
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