2008年12月18日

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『サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代』5

下條 信輔著  2008年12月10日発行  945円(税込)

サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)
著者:下條 信輔
販売元:筑摩書房
発売日:2008-12
おすすめ度:5.0
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著者はサブリミナルの研究者として世界的に高名な方です。一般向けの啓蒙書も過去にいくつか書かれており、新書では以下の2冊があります。

サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ
サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ
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「意識」とは何だろうか―脳の来歴、知覚の錯誤
「意識」とは何だろうか―脳の来歴、知覚の錯誤
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以上の2冊はかなり以前に出版された本ですが、それもそのはずで、本書のあとがきによると、著者は「十年間断筆宣言」をされていたそうです。本書は満を持しての新作になりますが、やはり期待は裏切られませんでした。



本書の目次は以下の通りです。

序章 心が先か身体が先か---情動と潜在認知

第1章 「快」はどこから来るのか

第2章 刺激の過剰

第3章 消費者は自由か

第4章 情動の政治

第5章 創造性と「暗黙知の海」

著者の専門分野である潜在認知の基礎的な研究の解説から、音楽、マーケティング、政治、創造性と興味深いテーマが幅広く扱われています。

一流の研究者の方が書かれた本に感じることが多いのですが、本書も問題の切り込み方に対して最初は違和感を感じつつも、読み進めていくうちに一つの完成された世界観が展開していたことに気付かされます。最初に感じる違和感が、オリジナリティの豊富さを表していると思います。

さまざまな分野について著者の話は広がるのですが、いずれも根底に人間の意識や潜在意識の本質についての問題意識があるように思われます。

本ブログのテーマと関係が深いのは、マーケティングについて書かれている部分です。個人的にマーケティングについていつも思っているのは、どこまでサブリミナル的な手法で人間に影響を与えてよいかということなのですが、いくつか参考になる話がありました。

最も参考になるのは以下の記述です。

「誰か(何か)に明らかに強制されたという因果推論が成り立たない場合に、人は自分の内側の「自由な」欲求に帰するのです。」

「自由」の本質が「強制されたという因果推論」の有無にあるということですから、自由ということには思われているほどの意味はないのかもしれません。最もうまくコントロールされている場合は、本人は「自由」を感じつつ、操作する方の思い通りになっているということになります。

結局この問題の答えは、操作される側が自由を感じるかどうかではなく、操作される側が利益をもたらされているかどうかかもしれません。ただし、利益が何かということは価値の相対性もあってこれはこれで難しい問題です。

操作されていることを知っていい気分がする人はあまりいないと思いますが、実は誰でも操作は行っています。たとえば、ほとんどの人は人と会うときは身だしなみを気にしますし、しゃべり方にも注意します。重要な取引の場にジャージ姿でいくビジネスマンはいません。

最近の広告でサブリミナルな効果を全く考えていないものはほとんどないのではないでしょうか。とくにテレビのCMなどには多くの費用がかかっているので、何らかの効果は用いられています。テレビのCMにはどのような手法が用いられているかを推理するという楽しみ方もあるかもしれません。

本書で扱われている内容については、その幅広さや深さから、ここで中途半端な概要を伝えるよりも、興味があれば実際に読んでいただいた方がよいと思います。

本書の内容は行動経済学とも深い関わりがあります。今後長期的には、人間に関する分野は本書に書かれているような内容を抜きには語れなくなると思います。

潜在知覚や潜在意識の分野の研究は、人間の本質に対する洞察を深めることにより、人類の諸問題を解決するブレイクスルーになるかもしれません。



investmentbooks at 23:57│Comments(0)TrackBack(0)clip!本--その他 

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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