2008年12月27日
『散歩でわかる経済学』
跡田 直澄著 2008年12月26日発行 777円(税込)
散歩でわかる経済学 (ヴィレッジブックス新書)
著者:跡田 直澄
販売元:ヴィレッジブックス
発売日:2008-12-26
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著者は大学教授、タイトルには「経済学」とついていますが、本書は随筆を読むように肩肘張らずに読める本です。「散歩」のゆるりとしたイメージが文体や内容に反映されています。
著者はさまざまな場所を散歩されていますが、具体的にどのような場所を散策されたかは、以下の章のタイトルからわかります。
- 高級住宅街散策
- 下町散策
- 大都会散策
- 農村散策
- 郊外都市散策
高級住宅街は成城、下町は浅草、大都会は銀座、農村は東京都と山梨県の県境、郊外都市は立川がそれぞれ採りあげられており、土地勘がある方であればより楽しめると思いますが、土地勘の有無は本書の本質的な理解には関係ないようです。
それぞれの場所を散策しながら、目についたことを経済や政治に絡めて話が展開するのですが、著者の視点を共有すると、ふだん何気なく眺めている光景が新たな意味を持って展開してくるのが感じられます。
散策して目につくもののとして本書に書かれているものは、たとえば、電線、公園、マンホール、書店、病院、地下鉄、河川、老人、ネットカフェ、マンションなど多岐にわたりますが、本書ではこのような項目が50程度あります。
本書を読むと、ふだん何気なく見ているものについて、ほとんど見ていなかったことに気付かされてます。本書を読んだ後は、散歩をより興味深くできるようになるかもしれません。
そして、本書に書かれていること以外でも、まだまだ目にしていても見えていないことはたくさんあることでしょう。
自分は世の中のことについてだいたいのことはわかっていると思っているときは、ほとんどの場合その言葉通りの意味であることは少なく、実際には単に認識が深まるのが停止しているだけであることが多いように思います。
このことは、その時代の知の最先端にいる人でも当てはまるでしょう。100年後から振り返ってみると、現在はわかっていないことがまだまだたくさん存在していたと思われるはずです。そして、100年後の100年後から振り返っても同様のはずです。
おそらく、知の最先端に近い人ほどわかっていないことが多いとより認識しているはずです。その業界全体がその業界で知られることについてはだいたい知るべきことは知り尽くしてしまったと思っているときほど、革新的な発見の夜明け前であることが多いようです。
本書は日常的な認識を一歩深めるという内容です。やや言い切りすぎな点もあるように感じるのですが、話としてはある程度言い切った方が面白いので、ある程度意図的に書かれているようにも感じました。
本書を参考にしつつ、自分で散歩しながらふだん当たり前のように眺めているものに注意すると、本書の助けなく自分で認識を深めることができるようになるかもしれません。認識を深めるには、まずは意識的になることが必要なようです。