2008年12月29日
『金融ハルマゲドン』
マイケル・パンズナー著 瀧本 透監訳
2009年1月1日発行 1680円(税込)
金融ハルマゲドン―加速する金融大崩壊に立ち向かう、あなたのための資産防衛戦略
著者:マイケル パンズナー
販売元:青志社
発売日:2008-12
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タイトルからはいかにもおどろおどろしい印象を受けます。最近は大型の書店の経済書コーナーに行くと、金融危機を煽るようなタイトルの本が多数平積みされています。これらの本はふだん買って読むことは少ないのですが、本書は不安を煽って投資対象に意図的に誘導するような本ではないので、この手の本に食わず嫌いをしないよう買って読んでみました。
著者は「国際金融アナリスト」とありますが、金融業界での経験が長い方のようです。本書は大きく四つのパートに分かれています。
- 脅威の連鎖でアメリカが滅びる
- アメリカ国民に突然降りかかったリスク
- 金融危機がもたらす思いがけない二次被害
- あなたのための資産防衛戦略
本書は金融危機におけるアメリカ経済の分析と予測が主な内容です。おそらく本書に書かれていることは、最も悲観的なシナリオであると思われます。実際に起こらないかもしれないにしても、最悪の場合はどのような事が生じうるかを知っているのは参考になる点もあります。
ハイパーインフレや預金封鎖など、どこかで聞いたような話が出てきますが、このような事までは起こらないにしても、今後ドルやドル建ての資産の価値の減少はかなりの高い可能性で避けることができないでしょう。
本書を読むと、アメリカで今後生じるかもしれない諸問題は、多くが日本が抱えている問題と似ていることがわかります。問題によっては、少子高齢化などアメリカよりも日本が深刻なものがあります。
結局のところ問題の本質としては、足りないお金をどうするかということです。お金が足りないのに配分されることを、皆それぞれが期待しており、その調整が困難であるということが問題の本質です。
もらうべきであると思っているお金を誰が減らされることになるか、誰が本来の労働力より安価な賃金で働くか、誰が持っている資産が目減りするかなどということに問題は帰着しますが、これらのことは皆が当然好まないので調整が難しいわけです。
アメリカの金融危機にしても、日本の国の借金にしても、国民全員が1年間必要最低限のレベルで生活をして、それ以外のお金はすべて税金として徴収すれば一気に解決します。皆でタダ働きをしようということです。
しかしながら、現実的にはそのようなことはできません。なぜなら、そうできないからこそ現在のような問題が生じているからです。
革新的なエネルギーの発見、劇的に生産性を向上させるようなイノベーション、あるいは他国から富を収奪したり他国民から搾取したりするといったようなことでもなければ、結局のところわかりにくい形で国内の誰かがタダ働きをすることによってしか解決できません。
日本におけるお金の問題も、本質的には以上のようなことなのですが、現在のところは、若年者が知らないうちに我慢させられているということで調整されているようです。
若年者が政治的に問題の解決に対して立ち上がれば配分の不平等は是正されるのでしょうが、いまのところ大きな流れはないようです。おそらく問題の本質がわかるくらい世の中のことを理解している若者は、自分でお金を稼いでいるのでしょう。
問題意識のない同世代のために政治的に活動するよりは、現在の日本であれば、目先の利く人は自分で稼ぐ方が話が話が早いはずです。日本における世代間の富の偏りは、若者の多くが問題意識を持たない限り、ずっと変わらないのかもしれません。
本書によると、アメリカでも日本と同じように若年者が不利になる可能性もあるようですが、日本よりは年配の人々が大変な目に遭いそうです。そのことは、年金が減ったり、医療が十分に受けられないという形で出てくるのでしょう。
本書は「資産防衛」についても書かれていますが、不安を煽るようなタイトルにしては、分散投資や生活を切りつめることなどオーソドックスなことが書かれています。類書によくあるように、「金を買うのがよい」などといった話は出てきません。
本書のような内容の本を読むときは、本が書かれた意図や著者の立ち位置に注意する必要がありますが、タイトルの割には誘導的な偏りが比較的少ない本かもしれません。
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この記事へのコメント
翻訳を担当しました瀧本と申します。
本を購入、ご紹介頂き有難うございます。
適格な書評に感服いたしました。
今後とも、よろしくお願いいたします。
本書は危機本の類書とは一線を画する内容だと思ったので、ご紹介させていただきました。こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします。








