2009年01月04日
『榊原式スピード思考力』
榊原 英資著 2008年12月20日発行 1000円(税込)
榊原式スピード思考力
著者:榊原 英資
販売元:幻冬舎
発売日:2008-12
おすすめ度:
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三ヶ月近く前に『竹中式マトリクス勉強法』を紹介しましたが、本書も同じ出版社から出ています。『竹中式マトリクス勉強法』は売れているようですが、この企画はシリーズ化されるのかもしれません。
著者は国際金融で著名な財務官僚であった方です。経済についての啓蒙書もよく書かれており、本ブログでも紹介したことがありましたが、本書のように直接経済とは関係のない本を採り上げるのは初めてです。
本書の内容は、全部で50個ある見出しを眺めると大まかな内容がわかりますが、著者がその見出しをどのように解説しているかが読みどころです。本書の内容を一文で表すと、「自分の頭で柔軟に考える」になると思います。
投機家ジョージ・ソロスの話も出てきますが、ソロスも場に応じた柔軟性を哲学の根底に置いています。為替の世界での関わりから、著者はソロスから影響を受けているのかもしれません。
その他著者に影響を与えたと思われる幾人かの方々についても、本書では説明されています。そのあたりからも、著者が周囲から影響を受けて柔軟に変化されていることがわかります。
本書に書かれていることは、あまりカドを感じさせるような内容はありません。当たり前のことを当たり前に行い続けるということに尽きるようです。本書に書かれていること一つ一つは難しくないのですが、すべてを長く継続するということが難しいのでしょう。
一般的に腕がよいプロの凄さは、特別な技にあるのではなく、基本的な動作をほとんどミスすることなく常に自然に繰り返せることにあります。
著者は著名な方ですが、おそらく本書に書かれているような事を続けてこられたのでしょう。本書に書かれていることは決して難しくはないのですが、皆が著者のようには著名になっていないことを考えると、難しくないことを続けることの難しさがわかります。
本書では著者は自分自身について以下のように書かれています。
「私自身は、一つのことを始めたら意地でもそれを続けてやろうとする頑固なところがあり、それが物事の継続にあたって非常に功を奏しているような気がしています。」
考えは柔軟に、継続は頑固にということが必要なようですが、そのあたりのバランスを取るのが一般的には難しいのかもしれません。ちなみに、以下のようにも書かれています。
「むろん続けられたのには、意地になっただけではなく、趣味であれ仕事であれ好きであることが大前提だと思います。そのためには、自分がそのことを楽しみ、長くやっていけるような環境を整えていく必要があるのでしょう。」
どのような環境に自分を置くかは非常に重要な問題です。これが上手くできれば、8割方の問題は解決していることでしょう。
世の中の問題の多くは本質的には配分の問題ですが、個人にとって一番重要なのは、自分自身をどのように配分するかであると思います。下手に配分して膨大な労力をかけて上手くいかないより、上手く配分してあまり労力をかけず上手くいく方がよいのは当然です。
一昨日紹介したの『ツキの大原則』もそうですが、人生はどのように上手く流れに乗るかに尽きるのかもしれません。『ツキの大原則』ほどではありませんが、本書も流れを意識した記述がところどころに見られます。
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この記事へのコメント
私は好奇心がつよくあらゆるものに手を伸ばす癖があるため、時間・お金の振り分け先としての学習対象をそろそろ2つ3つに絞っていこうと思っております。
また流れ・タイミングの見極めは今の株式市場をはじめ、人生のあらゆる決断において重要な指針であるように思います。
本日ご紹介にあずかりました本は、先ほど書店で立ち読みをしていた本ですので素晴らしい解説に驚いております。
好奇心が強い方は、何をしないかを選択するのがポイントなのかもしれません。本ブログも、どの本を紹介しないかを決めるのに苦労することがあります。
お書きの通り、流れやタイミングを見極めることができれば、市場や人生において有利な立場に立てると思います。市場はほぼゼロサムなのでタイミングをはるのは難しいですが、人生のタイミングはゼロサムでないので、市場ほどは難しくないかもしれません。いずれにしても、待つことが一番難しいようです。