2009年01月05日

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『新版 バブルの物語』4

ジョン・K・ガルブレイス著  鈴木 哲太郎訳

2008年12月18日発行  1575円(税込)

新版 バブルの物語新版 バブルの物語
著者:ジョン・ケネス・ガルブレイス
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2008-12-19
おすすめ度:5.0
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「新版」とありますが、1990年に原書が、1991年に日本語訳が出版されたものの復刻版です。訳者の前書きが追加されただけで、その他は同じ内容のようです。

今回の金融危機によって、入手しにくかったバブルや大恐慌などについての書籍が書店に並ぶようになり、本を読む側としてはありがたい点もあります。たとえば、3ヶ月ほど前に紹介した同著者による以下の古典があります。



『大暴落 1929』

『大暴落 1929』は1929年の大暴落を中心に大恐慌前後のアメリカ経済と株式市場のバブルとその崩壊について詳しく分析された本ですが、本書は歴史的に有名なバブルについて触れつつ、バブルを簡単に解説している本です。

オランダのチューリップ・バブル、イギリスのサウスシー・バブルなど歴史的に有名なバブルについての解説がありますが、バブルは歴史上多くの国で繰り返し生じてきたことが分かります。

本書が出版された1990年は、日本の株式市場のバブルが崩壊した直後、不動産市場のバブルが崩壊する直前から始まりにかけてであり、本書にもそのことについての記述が少しあります。

本書を読む限りでは、著者は日本のバブルが崩壊して痛手を被ることは予想されていたようですが、その処理に10年以上かかり、日本の停滞がこれほどまでに長期化するとは思っていなかったことが伝わってきます。

むしろ本書から伝わるのは、1990年当時の日本が世界経済においてかなりの存在感があり、その後もその存在感を保ち続けながら成長を続けるであろうと著者が思われていたことです。そしてそのことは、おそらく世界の共通認識だったはずです。

著者は、バブルは市場そのものに内在していると見なされているようであり、本書はバブルとその崩壊を内包している市場原理主義への警告の書としても読むことができるかもしれません。

これからもバブルは繰り返し起こるであろうと書かれています。本書以降も、アメリカではインターネットバブル、証券化バブルが生じ、そしてそれぞれ崩壊しました。

本書は1987年の暴落に触発されて書かれた印象も受けますが、今から振り返ると1987年のアメリカの暴落は、1990年代における歴史的な大上昇相場の前のわずかな調整期間であったということになります。

著者はバブルの原因を、集団的ユーフォリア、新しい技術革新、新しい金融技術、「てこ」などと分析されています。「てこ」は今ではレバレッジと訳される言葉です。これらのことは、20世紀末のインターネットバブルや今回の証券バブルにおいてもよく当てはまります。

バブルについては、人間は経験からあまり多くを学べないということがわかります。今回の金融危機からも教訓を得ているはずですが、またしばらくすると同じことが繰り返されるのでしょう。

バブルはその仕組みや当事者の心性は恋愛と似ていますが、バブルで人が懲りないのは、恋愛で懲りないのと同じです。毎回今回だけは違うと思いながら、バブルは崩壊します。

バブルにおいても、恋愛においても人が懲りないのは、懲りないことに意味があるからです。恋愛は特定の異性の価値について一時的に盲目的な過大評価をすることにより、子孫を残させるという働きがあります。

バブルについては、それが存在する理由は人類がフロンティアを拡大させたり、技術を進歩させたりといった意味があるのでしょう。意味がなければこのようには根深く存在しないはずです。

著者はバブルを予防することについて懐疑的であることを提案されていますが、その後繰り返しバブルが生じたことを思うと、懐疑的になるのは難しいようです。失恋して一時的に慎重になっても、また「最高の人」が現れれば幸せになってしまいます。



investmentbooks at 23:58│Comments(2)TrackBack(1)clip!本--株式投資 

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1. 新版 バブルの物語  [ 書評リンク ]   2009年01月08日 21:02
書評リンク - 新版 バブルの物語

この記事へのコメント

1. Posted by ホリ   2009年01月06日 13:17
5 こんにちは。
『大暴落 1929』は日経平均が大幅に値下げした
10月に読みました。
人間の楽観主義といいますか狂乱な一面が、いましめになりました。

バブルに関して人が経験から学べないということに関しまして、私が思いますのはバブルという本質は変わっていないものの被っている仮面
(バブルの対象)が違うということと、バブル
を実際に体験していないがために、その恐さを
知らない人が騙され引き起こすのかと。

ですから痛い目にあって学ぶということも大事でしょうが、本などからの知識レベルでしっかり予防注射をしておかなくてはと思っております。

しかしかの有名なアイザック・ニュートンですらバブルで大損したということを聞いたことが
ありますが(笑)


バブルというと悲観的なことを連想することが多いですが、一部の文献でバブルがあるからインフラが整備される、と記されておりそういった一面もあるのかと妙に感心したことがあります。
2. Posted by bestbook   2009年01月07日 00:23
5 コメントありがとうございます。

10月は『大暴落 1929』が発売されて間もない頃ですね。タイミングがよいと思います。

お書きの通り、バブルは表面的な装いを変えて出現しますが、本質は同じです。恋愛において、毎回違った異性を好きになりますが、異性であることは共通しているのと同じですね。

知らない人が引き起こすこともありますが、同じ人が関与することもあるかもしれません。たしかに、意識して予防することが大事です。

ニュートンの逸話は本書にも書かれていました。ニュートンも人間の「狂気」には振り回されたようです。

バブルは否定的に語られることが多いのですが、実は多くの人は待ち望んでいたりします。だからこそ、繰り返されるのでしょうけど。

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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