2009年01月12日

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『「依存症」の日本経済』5

上野 泰也著  2009年1月7日発行  1575円(税込)

「依存症」の日本経済 (講談社BIZ)「依存症」の日本経済 (講談社BIZ)
著者:上野 泰也
販売元:講談社
発売日:2009-01-08
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著者は著名なエコノミストで、現実を直視した厳しめの経済予測で知られています。本ブログでも、過去に何冊か著作を紹介させていただいたことがあります。

本書は「依存症」をキーワードに、景気が下り坂になっている日本経済をさまざまな点から分析されています。どのようにさまざまな点から分析されているかは、章のタイトルからよくわかります。



  1. 日本の個人消費は「女性依存」
  2. お父さんのこづかい減少でわかる「交際費依存」体質
  3. なお残る「建設業依存」と構造調整圧力
  4. 食料の「海外依存」は本当に問題なのか
  5. 緩和の熱が冷め「規制依存」に逆戻りする日本
  6. 教育はどこまで「学習塾依存」を強めるのか
  7. 景気判断や買い物で「マスコミ依存」する日本人
  8. 投資に移行しにくい家計運用の「預金依存」
  9. 主導権を握れず「外国人依存」が続く金融市場
  10. 日本経済はやっぱり「米国依存」
  11. ケーススタディー:少子高齢化の秋田県は「日本の未来図」

日常生活に密着しているテーマも多いので、本書の内容はほとんどの方に何らかの関わりがあると思います。

著者の経済予測は現実を直視した「悲観的」な内容が多く、本書でも日本の先行きについてはあまり明るいようには書かれていませんが、解決に向けていくつかの提案も書かれています。

本書の依存に限らず、一般的に依存で問題なのは、自分が依存しているという自覚がないこと多いことです。アルコール依存症など病的なものは、自分が依存していることを自覚しないと、治療のスタート地点にすら立つことができません。

と言っても、依存は悪いものばかりではなく、そもそも人間がふつうに生活していく上では、相互依存は避けることができません。勤めている団体に依存していないと言い切れる人はなかなかいないと思います。

依存しないためには、自分自身が柔軟性を持って強くなり、関係ある対象を多様にするしかありません。依存というのは硬直性の裏返しなので、依存度を低めるためには柔軟性が必要になります。

本書に書かれていることも、さまざまな分野に渡ってはいますが、結局のところ、問題の本質は硬直性にあり、本書で説明されていることは、日本にさまざまな場面に存在する硬直性と言えます。今後日本の少子高齢化がさらに進行すると、ますます硬直化する可能性もあります。耳が痛い話が多いのですが、本書はそうならないための警告の書でもあります。

本書でとくにユニークだったのは、最後にある秋田県の分析です。秋田県は、少子高齢化が日本全体と比べて10年程度早く進行しているので、今後の日本を先取りしているとのことです。著者は秋田県の御出身だそうで、「頑張れ秋田」を通じて「頑張れ日本」というメッセージが込められているように感じました。

県民性や環境の違いもあるので、そのまま当てはまらないかもしれませんが、経済の「縮小均衡」を暗示する少子高齢化の部分は参考になると思います。日本が少子高齢化において先進国の先頭を走っていることを考えると、日本経済のみならず、今後の世界経済を考える上でも参考になるかもしれません。

ただし、秋田県を選んで日本の将来を考えようとされるところに、著者の個性が出ているとも考えることができるかもしれません。

エコノミストの方が書かれた本は、現場から離れた指標などの分析に終始しがちなのですが、本書も含めて著者が書かれているものは、現場の生活感覚や御自身の体験も重視されているので、経済を読み解く上で参考になる話が多いと思います。日本経済を考えてみたい方は興味深く読める本です。



investmentbooks at 23:59│Comments(2)TrackBack(1)clip!本--日本経済 

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1. 上野 泰也 『「依存症」の日本経済 (講談社BIZ) (講談社BIZ)』  [ 世界恐慌の研究 ]   2009年02月11日 22:31
内容紹介 危機と恐慌の後には何が来るのか? 日本経済を深く蝕んでいる「依存症」の正体とは? 10年後のこの国はどうなっているのか? 6年連続ランキング1位のトップエコノミストが、危機の真の原因とその解決法を、さまざまな角度からクリアに説明する! 本書で明らかに....

この記事へのコメント

1. Posted by ホリ   2009年01月13日 01:04
5 こんばんは。

上野さんの著作ですと、『チーズの値段から未来が見える 』を読んだことがあります。
予測はもちろん参考になるのですが、予測法の紹介に私は興味をそそられました。

経済にひっかけはない、と言う著者の言葉に公開情報のみで描くシナリオが一般人とここまで違ってくるのかと驚いたと同時にスクープネタを心のどこかで求める自らの姿勢に恥ずかしさを覚えた次第です。
2. Posted by bestbook   2009年01月13日 22:46
5 ホリさん、コメントありがとうございます。

上野さんの『チーズの値段から未来が見える』は自分も読んだことがあります。過去のブログの記事でも紹介した記憶があります。お書きの通り、エコノミストとしての予測法が細かく書かれていたように思います。

たしかに、いかにミスリーディングな情報に惑わされないかがポイントなのかもしれません。自分も自戒したいところです。

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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