2009年01月20日
『ロシア・ショック』
大前 研一著 2008年11月11日発行 1575円(税込)
ロシア・ショック
著者:大前 研一
販売元:講談社
発売日:2008-11-11
おすすめ度:
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著者の本は『マネー力』を数日前に紹介したばかりですが、ホリさんとUIさんから本書をコメント欄を通じてすすめてもらったので、早速購入して読んでみました。
本書は先日紹介した『マネー力』よりも、国際性、先見性、視野のスケールの大きさ、ビジネスについての視点など、著者の真骨頂がより発揮されています。
ロシアという国は物理的な距離は近くにありながら、心理的な距離は遠い国です。これは、日本が親米的であること、旧ソビエトが共産主義国であったこと、ロシアとの過去の関係、現在も未解決の北方領土問題などが影響していると思われます。英語、あるいは中国語と比べても、ロシア語を勉強している日本人はほとんどいません。
著者は本書で個人の実体験も踏まえながら、これからの日本にとってのロシアという国の重要性について述べられています。本書の要点を簡単にまとめると以下のようになります。
- ロシアはプーチン前大統領の政治力によって復活し、今後もプーチンの政治的な影響力が長年続くと予想される
- 資源が豊富であり、教育水準も高いロシアは今後も持続的な発展が続くと考えられる
- 日本とロシアは補完的なので、相互にメリットのある関係を築くことができる
- 今後も長期間にわたって政治的な手腕を発揮すると予想されるプーチンおよびロシア人の多くは親日的である
- ビジネスにおいてもロシアでの日本製品の評価は高く、今後も大きな発展が望める
- 北方領土問題のような件については、長期的な損得を考えて大人の解決をするのがよい
ロシア人が親日的であるのに比べて、日本のロシアについてのイメージはあまりよくなく、一般的には無関心とも言えるほどです。本書はそのアンバランスさを改善するために書かれているようです。
著者はプーチン前大統領の政治的手腕が非常に高いと書かれています。プーチンが親日的なスタンスを取っているのも、その政治的な能力から自国にとっての日本の有用性を直観しているからかもしれません。
プーチンの外からのイメージは「強権的」という言葉でよく語られるのですが、国内での支持率は圧倒的なようです。本書ではフラットタックスなどについての政策も説明されていますが、独裁的だからこそ大胆な改革もでたようであり、その成果は出ているようです。
本書を読むと、プーチンという人はかなり男性性が強い人であることがわかります。そしてかなり柔軟性もあるようです。本書のような本を著者が書かれたのは、著者はプーチンという人を高く評価されていることがあるように感じました。
日本は国として男性性が弱い国なので、今後ロシアと対等な関係を築くのであれば、プーチンという男性性の強い政治家に引っ張られているロシアと対等につきあえるような男性性を発達させる必要があります。そうしないと最初はよかったとしても、そのうち飲み込まれてしまうかもしれません。
これはロシアとの関係に限らず、他の国々との関係についても言えることです。本書はロシアのことについて述べられていますが、本書にあるようなロシアとの今後の関係における戦略的な視点は、他の国々についても同様に必要です。
本書はロシアについての本ですが、ロシア以外の国々との外交についても考えさせられる本です。これから多極化する世界において日本には戦略的な外交が重要になってくるという点からも、本書はおすすめいただいたように面白い本だったと思います。ホリさん、UIさん、ありがとうございました。
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この記事へのコメント
いつもご紹介の本・見識を参考にさせていただいています。
こちらこそありがとうございます。
本書をきっかけにして、ロシアの本をいくつか読んでみたいと思います。ご紹介ありがとうございました。