2009年01月27日

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『バフェットの株主総会』5

ジェフ・マシューズ著   黒輪 篤嗣訳

2009年1月23日発行  1890円(税込)

バフェットの株主総会バフェットの株主総会
著者:ジェフ・マシューズ
販売元:エクスナレッジ
発売日:2009-01-23
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ひさびさのバフェット本です。著者は長年に渡りヘッジファンドの運用をされている方で、本書は以下の著者の投資についてのブログが元になっているようです。

Jeff Matthews Is Not Making This Up

本書の原題は『Pilgrimage to Warren Buffett's Omaha』(ウォーレンバフェットのいるオマハへの巡礼)となっています。バフェットが経営するバークシャー・ハサウェイの株主総会は毎年アメリカのオマハで開かれますが、本書は2007年度、2008年度株主総会に著者が参加された際の総会の様子が臨場感溢れる筆致で記述されています。



本書は過去にバフェットについての本を読んだことがあってバフェットの投資哲学に興味を持っている方であれば、とくに興味深く読めると思います。

バークシャーの株主総会は年々参加者が増え続けており、昨年の5月に開かれた最新の総会への参加者は世界中から3万人以上の人が出席したようです。著者はそのうちの一人です。

原書のタイトルに「巡礼」とありますが、バークシャーの株主総会は「信者」の「巡礼」のようになっている面もあり、本書からはその雰囲気がよく伝わってきます。

本書は2007年度と2008年度の二つの総会の様子について書かれていますが、2年連続して書かれているので、その2回の共通する部分、異なる部分などが比較できて面白いと思います。

バークシャーの総会は、バフェットと長年に渡るバフェットのビジネスパートナーであるチャーリー・マンガーが、参加者からの質問に5時間以上にわたって直接答えるという点に特徴があり、参加者はそれを一番の楽しみにしているようです。

本書の内容はその質疑応答がほとんどです。幅広い問題についてさまざまな国や年齢の人が性別を問わず質問しています。一回の総会で50回以上の質疑応答があります。

今回の金融危機についてもある程度は触れられており、そのような点でも興味深いのですが、一つひとつの質疑応答は長いわけではないので、あまり詳しい答はなく、どちらかというとバフェットのウィットや含蓄に富んだ切り返しを楽しむような感じになると思います。

本書は手放しでバフェットやバークシャー・ハサウェイを礼賛しているわけではなく、それなりに評価するところは評価し、疑問に思うことは批判されています。総会の質疑応答も自由な形式であるため、必ずしもバフェットにとって答えやすい質問ばかりがされているわけではなく、そのような質問に対する対応なども興味深いところです。

著者が批判的に書かれているのは、バフェットの言動が一致していなかったり、以前に言っていたことと矛盾していたりということですが、「お金を増やす」ということについてはブレがありません。

環境の変化に応じてバフェットも変化しているので矛盾が出てくるということ、株式投資は矛盾に満ちた人間に深く関わりがあるので表面上の矛盾は避けられない点があると思います。

批判的なことも書かれてはいますが、やはり本書ではバフェットに対して評価されている部分が多くを占めます。400ページ近い本ですが、ブログの記事が元になっているので、読みやすいスタイルで書かれています。

著者のブログは現在進行形なので、後書きにも書かれているように、数ヶ月後に控えている来年度の総会に参加されたときの記事もアップされることでしょう。今回の金融危機を経た来年度の総会における質疑応答は非常に興味深いものがあると思うので、今後の更新が今から楽しみです。



investmentbooks at 23:58│Comments(0)TrackBack(1)clip!本--株式投資 

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1. バフェットの株主総会  [ 書評リンク ]   2009年01月29日 22:15
書評リンク - バフェットの株主総会

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
このブログについて
2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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