2009年02月01日

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『ケン・フィッシャーのPSR株分析』5

ケン・フィッシャー著   鈴木 一之監訳  丸山 清志訳

2009年1月3日発行  2415円(税込)

ケン・フィッシャーのPSR株分析 (ウィザードブックシリーズ)ケン・フィッシャーのPSR株分析 (ウィザードブックシリーズ)
著者:ケン・フィッシャー
販売元:パンローリング
発売日:2009-01-16
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株式投資に本格的な興味のある方であれば本書はおすすめです。翻訳本の前書きによると、本書は原書が1984年に出版され、2008年に復刻版が出たとのことです。

著者のケン・フィッシャーの父親は、バフェットにも影響を与えた『フィッシャーの「超」成長株投資』の著者であるフィリップ・フィッシャーです。バフェット自身自分の投資法は「85%がベンジャミン・グレアム、15%がフィリップ・フィッシャー」と語っています。



本書はおよそ25年前の本なので、一世代前の本ということになりますが、本書で丁寧に説明されている考え方は現在でも通用すると思います。本書の投資法の目標は、3年で株価が10倍程度になる銘柄を発掘することです。

本書の原書のタイトルは『Super Stocks』(スーパー株式)であり、PSRという言葉は原書のタイトルには出てきませんが、本書において重要な概念であり、本文では詳しく説明されています。

ご存知の方も多いと思いますが、PSRとはPrice-to-Sales Ratioの略であり、株価売上倍率と訳される投資における指標です。時価総額を一年間の売上で割って算出します。たとえば、時価総額が50億円で年間の売上が100億円であれば、PSRは50億円÷100億円=0.5となります。

本書では株式の割安さの指標として、PERやPBRではなくPSRに着目するように主張しています。PSRの割安さに注目する投資法の優秀性については、本書の後に出版された『ウォール街で勝つ法則 − 株式投資で最高の収益を上げるために』でも、長期的なデータの分析を元に確認されています。

株価は売上の変動よりも利益の変動に反応しやすいため、利益が急激に落ち込んだり赤字になったりすると株価は大きく下落します。そのような場合でも、売上は変動しにくく、企業の事業そのものに成長性があれば、経営や市況の状態が改善すると利益が劇的に改善し、その結果大幅に株価が上昇します。

本書ではそのような銘柄を発掘する方法が述べられています。事例は古いのですが、考え方は参考になります。1984年と言えば、日本企業がアメリカで脅威として捉えられていた頃であり、そのあたりのことについても少し触れられていて、当時の時代を感じます。

また当時業界で知られつつあったバフェットについても少し記述があり、興味深く感じます。当時からすでに評価されていたようですが、当時の資産は数億ドルと書かれています。それから20年以上を経て、資産がさらにその100倍程度になるとは著者も想像しなかったのではないでしょうか。

本書に書かれている考え方は、現在の相場環境では特に有用な考え方です。極端な利益の低下や赤字などにより、PERは参考にしにくくなっています。

売上はその企業の商品がどれくらい社会に求められているかという一つの指標ですが、売上と比べて株価が下落しているため、本書で投資対象とされている低PSR銘柄は数多く存在します。

単にPSRが低ければよいというわけではありませんが、本書ではさらにどのような点に着目してさらに低PSR銘柄から絞り込むかについても書かれています。

現在の相場環境において、本書の方法の懸念点としては、売上自体が今までになく極端に減少してしまう可能性があることでしょう。今のところ個別企業の売上がどこまで低下するか先が見えていません。倒産の可能性などについて、安全性にも十分に注意する必要があると思います。

本書の方法を直接用いないにしても、本書を読んで株式投資について考えを巡らせることは、投資の幅を広げることができると思います。株式投資に本格的に興味があり、自分の頭を使って銘柄選択をしたい方には本書はおすすめの本です。



investmentbooks at 22:52│Comments(0)TrackBack(0)clip!本--株式投資 

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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