2009年02月10日

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『不動産バブル崩壊で消える会社・残る会社』3

山下 和之著  2009年1月19日発行  1470円(税込)

不動産バブル崩壊で消える会社・残る会社不動産バブル崩壊で消える会社・残る会社
著者:山下和之
販売元:ぱる出版
発売日:2009-01-06
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日本経済と同じように不動産業界も倒産が続いており底が見えない状況なので、本書を読んでみました。著者は「住宅・不動産ジャーナリスト」をされている方です。

本書では不動産業界全般の近況について、業界外の人にも分かりやすいよう平易に解説されています。本書は新しい考え方を学ぶための本ではなく、あくまで現況を専門家の視点から解説してもらうための本です。本書の目次は以下の通りです。



  1. 不動産バブル崩壊の実態
  2. 不動産はなぜ売れなくなったのか!
  3. 不動産会社が半減する理由
  4. 不動産会社の生き残り戦略
  5. 厳しい時代の不動産会社の見極め方

どうして不動産が売れないかですが、もっともシンプルな形で述べると、「高すぎるから」ということになるでしょう。

不動産業界の不況については、サブプライム問題に端を発する世界的な景気後退の影響はもちろんありますが、その前からマンションなどは一般的な感覚からすると高すぎたと思います。

海外からのお金が流入して不動産が高くなっていましたが、今回のミニバブルもはじけて、現在はようやく適正価格に近づく過程にあるのかもしれません。たしかに不景気ではあるのですが、買い手からすると不動産を安く買えるチャンスが近づいているとも考えられます。

本書では「適正な価格」であれば、現在でも売れているマンションがあると具体的に述べられていますが、安ければ買いたい方は少なくないことでしょう。

マンションベロパーなども倒産が続き、市況の雰囲気はよくありませんが、現在は不動産がよりよくなるための調整段階なのかもしれません。今後生き残る企業は、よりよいものをより低価格で供給できる企業であり、それはビジネスの原点に立ち返ることになります。

不動産は扱う額が大きいので、キャピタルゲインを当てにする構造になりやすいのですが、本来は価値のある不動産を供給するのが役割のはずです。これからしばらくはそのような企業が生き残ることになるのでしょうが、景気が回復するとまた新興の不動産企業が立ち上がるのでしょう。

不動産は生活感覚における豊かさと強く結びついているという個々人の視点において、そして不動産業界の動向が経済に大きな影響を与えるという点においても重要です。今回のサブプライム問題も不動産の問題でした。

今回の景気後退により記憶が薄れつつありますが、建築基準法の改正による「官製不況」はまだ記憶に新しいところです。

豊かさを感じる程度に広い家やマンションが、それなりの価格で買えるかどうかは政策の役割も大きいと思います。以上のようにさまざまな点で住宅政策は重要です。

さらに住宅政策は相続税などとも関係します。現在の日本においては、安い時期に不動産を購入してそれを相続する家系と、不動産を所有しない家系の格差がかなりあると思います。

不動産の流動化というと証券化などを思い浮かべますが、本当の流動化とは家系に不動産を固定させないことだと思います。ただし、家系の不動産を流動化するのは、相続自体が自分の遺伝子を残してくれる子供に対する「愛情」と関係しているので、家系の不動産を流動化するのは容易ではないかもしれません。

相続税の税率を高くして家系の不動産を流動化するということは、ヒトが根深く持っている子孫に対する執着心を溶かしてしまうことだからです。

個々人が子孫を大事にするというミクロ的に合理的な振る舞いが、日本の将来全体を非活性化し、結局子孫にとって住みやすい国になりそうにないのは皮肉なことです。

おそらく国の役割は、個人では原理的に解決できないこのような問題を解決するような仕組みを作ることにあるはずです。国といっても最終的には個人のレベルでの理解が必要なので、個々人の意識を高めるしかないのですが。



investmentbooks at 22:00│Comments(0)TrackBack(1)clip!本--不動産投資 

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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