2009年02月13日
『長期投資道』
岡本 和久著 2009年3月3日発行 1890円(税込)
長期投資道
著者:岡本和久
販売元:パンローリング
発売日:2009-02-13
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本書は1990年に出版された『勝者のゲームを闘う法―株式分析の実戦技法』が加筆・再編集されたものです。1990年といえば、日本の株式市場のバブルが崩壊した年です。当時から20年近く経っていますが、当時は日本の市場がここまで低迷するとは予想できなかったことでしょう。
以前の本のサブタイトルにあるように、本書には株式の分析方法についてある程度の分量が割かれています。書かれている分析方法は、現在からすると標準的ですが、当時の日本では最先端の方法だったのかもしれません。
本書の目次は以下の通りです。
- 勝者のゲームを闘う法
- 証券アナリストの技法---株式の価値を求めて
- 「勝者のゲーム」を闘う人々---その投資哲学
- 運用形態の変遷と個人のための資産運用
- 勝者との特別対談
よく出てくる「勝者のゲーム」というフレーズは、チャールズ・エリスの『敗者のゲーム』から来ています。第4章と5章が新たに加わった部分であり、第5章では著者と澤上篤人さん、竹田和平さんとの対談がそれぞれ収められています。
第3章では、海外のアナリストやポートフォリオ・マネジャー10名以上から本書に対して寄稿された「投資哲学」が載せられています。一つ一つは分量が少なく、あまり体系的ではありませんが、当時の海外投資家の日本株に対する考えを垣間見ることができます。
日本の絶頂期の直後の文章だけに、日本の国としての評価は高いようですが、株式市場の特異性などは当時から指摘されています。
やはりその中でも傑出して参考になるのは、ジョン・テンプルトン卿の投資哲学の概略について述べられている部分です。投資哲学の原則については、以下のように書かれています。
- バーゲン・ハンティング
- 分散投資
- 社会・政治に幅広い認識を持つ
- 柔軟であること
- 忍耐強さ
- 投資機会の徹底的調査
- 幅広い交友のネットワーク
- 思考のコントロール
- 前向きの発想
- 単純明快であること
考え方としては難しくないのですが、実践するのは心理的にも時間的にも難しいことが多いようです。難しいからこそ簡単に真似ることが出来ず、リターンも大きくなるのでしょう。
本書は全体的に総論的な内容の本です。企業のファンダメンタルに基づく投資をするのであれば、本書の内容を踏まえた上で、さらに各論を学ぶ必要があると思います。しかしながら、全体的にチェックするポイントがまとめて書かれているので、企業を分析するときに抜けている部分を確認するのに役立つかもしれません。
本書で個人的に一番面白いと思ったのは、著者と竹田和平さんの対談ではあったのですが。