2009年02月21日
『「10年大局観」で読む 2019年までの黄金の投資戦略』
若林 栄四著 2009年2月20日発行 1575円(税込)
「10年大局観」で読む 2019年までの黄金の投資戦略
著者:若林 栄四
販売元:日本実業出版社
発売日:2009-02-17
クチコミを見る
著者は長年にわたり為替相場の世界に生きている方で、相場学を提唱されています。本書は著者独自の分析に基づく、相場の視点から眺めた今後10年の世界経済や日本経済とさまざまな市場の予測について述べられている本です。
テクニカル分析をあまり好まない方は、著者のテクニカル分析を中心とした相場観には違和感を感じることがあるかもしれませんが、その原理などは理解できないところがあっても、その世界で長年にわたり道を追求された方の話は価値があるように感じます。
本書では、年や値についてかなりピンポイントな予測がされています。たとえば、日本株については以下の通りです。
- 2009年 上昇
- 2010年〜2011年 下落
- 2011年〜2013年 下落あるいは横ばい
- 2013年 インフレ開始による上昇トレンド入り
日本株だけでなく、アメリカ株、ドルやユーロなど為替相場、コモディティや金などについても主にテクニカルの観点から分析されています。著者の話が面白いのは、テクニカル分析の結果から逆に世界経済のイベントを予想されているところです。
過去の御自身の見通しが外れたことにも言及されていますが、相場は予測と修正の繰り返しなので、当たることよりも外れたこと常に修正し続けることが重要です。
これは相場に限らず現実世界でもそうです。将来を正確に予測することはできませんが、常に修正し続けてリターンを高くすることはできます。相場の予測や現実世界の予測は予測通りに行かないのが前提で、問題は外れた場合にいかに修正するかです。
最後に相場のポイントが20ほど述べられています。そのうち印象に残ったものを10ほど書いてみます。
- 半年くらいの相場にファンダメンタルズはいらない
- 構造論が出たら仕舞い
- 買ってすぐに上がるような相場は危険
- 相場には単純思考で臨む
- 常に少数側に身を置く
- 深夜にディーリングをやるのは間違い
- ロスカットは必ず実行する
- 平常心を保つこと
- 一縷の望みを持ってはいけない
- 大やられしたら様子を見る
これらは人生の別の局面にも応用できるような考え方です。無常な現実世界と対峙する心構えが書かれているように読み取れます。
現実は常に変化し続けるので、固定的な思いこみは現実への対応力を弱めます。本書が書かれてからも現実は変化し続けているので、著者の考えは本書を書かれた頃と微妙に変化している可能性もあります。
結局のところ、相場は自分で判断し、自分でポジションを取るしかありません。あらゆる情報は参考にできますが、当てにすることはできません。これも現実世界に対する関わり方と同様です。
常に変化する相場の世界の不安定さを好まない方もいますが、人間が生きている世界も常に変化し続けるため不安定です。人間は世界を固定的に考え何とか不安定さをなくそうとしますが、不安定さをなくそうとすること自体が現実のあり方から外れてしまいます。
おそらく人間のあり方としては、最適な固定した状態を求めるよりも、常に変化できる状態の方が望ましいはずです。最も安定した状態は、逆説的に最も安定していない状態と言えるかもしれません。