2009年02月24日

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『クリエイティブ都市論―創造性は居心地のよい場所を求める』4

リチャード・フロリダ著  井口 典夫訳

2009年2月19日発行  2520円(税込)

クリエイティブ都市論―創造性は居心地のよい場所を求めるクリエイティブ都市論―創造性は居心地のよい場所を求める
著者:リチャード・フロリダ
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2009-02-20
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タイトルにある「クリエイティブ」という言葉から連想されますが、著者の本は『クリエイティブ・クラスの世紀』『クリエイティブ資本論』の2冊の本がここ2年くらいで翻訳・出版されています。本書は続編的な意味合いもありますが、本書単独でも読むことができます。

クリエイティブになるために住む場所の重要性が本書のテーマですが、そのことについて著者は前書きで以下のように書かれています。



「この第三の決断(注:住む場所の選択の決断)は、人生のあらゆる側面に対して重大かつ長期的な影響をおよぼす。否、住む場所こそ職業的成功や人生上の人脈から、幸福感や快適な暮らしに至るまでの全てを決定するのである。」

「第三の決断」と書かれていますが、後の二つは職業やキャリアの選択と伴侶の選択です。職業や配偶者の選択については、多くの人は不十分ながらもある程度意識的に考えていますが、住む場所についてはそれほど意識的でないことも多いようです。

本書は大きく三つのパートに分かれています。

  1. メガ地域の世紀
  2. 場所の経済学
  3. 場所の心理学

メガ地域とは経済単位となる巨大都市圏のことです。著者の分析によると、グローバル経済は20から30のメガ地域が担っているとのことです。ちなみに世界最大級のメガ地域は、なんと「広域東京圏」だそうです。

世界がグローバル化しても必ずしも全体が「フラット」になるのではなく、メガ地域を出っぱりとした「スパイキー」な構造になると書かれています。この分布を分かりやすく見るためには、夜間の衛星写真を見るとよくわかるようです。メガ地域は明るくなっています。

場所の経済学については、豊富なデータをもとに、なぜ都市にメリットがあるかということや、メガ地域がどのように形成されるかなどについて述べられています。面白いのは、芸術家やホモセクシャルが多い都市とその都市の住宅価格には相関があることです。

日本の都市についても記述はありますが、アメリカの本なので、アメリカの都市の分析が充実しています。同じような分析は日本についても可能でしょう。

客観的な分析も興味深いのですが、やはり本書の読みどころは、第3部の「場所の心理学」です。この部分はやや自己啓発的な要素もあり、著者もそのことは意識されているようです。住む場所によって自分の可能性を広げるという視点から書かれています。

居住地を選ぶには以下のことが着目点だそうです。

  • 見た目の美しさ
  • 人に出会える場所
  • 文化に出会える場所
  • 基本的サービス(教育施設、医療施設、交通など)
  • 開放的な場所
  • 安心感のある場所
  • リーダーの資質

「開放的な場所」や「リーダーの資質」といったあたりがアメリカ的な印象を受けます。日本では住む都市を決めるときに、市長がどのような人かということはあまり気にしないかもしれません。アメリカでは地方の自治が比較的独立しているためと思われます。また、都市の歴史などについての考察が乏しいところなどもアメリカ的です。

自分にふさわしい都市を選ぶための10のステップが述べられていますが、そのあたりに自己啓発的な感じを受けます。

  1. 優先順位を明確にする
  2. 候補地リストを作る
  3. 下調べをする
  4. 得られるものは何か
  5. 基本的サービスを押さえる
  6. リーダーシップは十分か
  7. 価値観を確認する
  8. 心躍るものはあるか
  9. すべてを集計する
  10. 下見をする

どのような観点からどのようなステップで住む都市を決めるかということについては、読みながら異性のパートナーを選択することと重なって見えて仕方ありませんでした。

住む場所もパートナーも、日々の生活において多くの時間関わること、いったん決めると容易には変えにくいこと、定期的にコストがかかること、精神的・身体的な影響を大きく受けることなどが共通しています。

ちなみに著者らの「居住地と幸福に関する調査」によると、幸福感を決定づける最大要因は美的感覚と「エネルギー」だそうです。「くれぐれも真剣に考えて欲しい。」とのことです。

パートナーについても幸福感を決定づける最大要因は、容姿が好みであることと、そのパートナーといると自然に元気が湧いてくるということになるのかもしれません。

パートナーもそうですが、住む場所にも出会いや縁があるので、すべてを意識的に決めるわけにはいきませんが、両者とも人生の重大事なので、一度は意識的に考えてみるのもよいかもしれません。そのような場合、本書は足掛かりになる本です。



investmentbooks at 23:58│Comments(2)TrackBack(1)clip!本--その他 

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1. 【読書メモ】クリエイティブ都市論 リチャード・フロリダ  [ レバレッジ投資実践日記 ]   2010年02月21日 08:53
今年159冊目。おススメ度★★★★☆ 世界的ベストセラー『クリエイティブ資本論』

この記事へのコメント

1. Posted by レバレッジ君   2009年02月27日 23:37
いつもながら、新しい本を読むのが早いですね。

私もこの本書店で先日見つけ購入候補リストに入れたばかりですが、とても面白そうな本ですね。

私も住む場所は人生においてとても重要な要素だと思います。
2. Posted by bestbook   2009年02月28日 01:42
レバレッジ君さん、こんばんは。コメントありがとうございます。

本書は日本人が読むことをかなり意識して書かれているようにも感じました。どこの街に住むか、どのような住宅に住むかなどについては日本語の本も数多く出ていますが、本書のようにグローバルな視点と自己啓発的な側面を持っている本は今までにないと思います。そのような点において本書は面白い本でした。

お書きの通り住む場所はとても重要ですが、その割には根本から考察されている本はあまりないので、本書は貴重だと思います。

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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