2009年02月25日
『トップ営業マンを見習うな!』
三宅 壽雄著 2009年2月9日発行 893円(税込)
トップ営業マンを見習うな! (日経プレミアシリーズ)
著者:三宅 壽雄
販売元:日本経済新聞出版社
発売日:2009-02
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著者は営業コンサルタントをされている方ですが、マネジメントも含んで営業の現場での経験も長い方です。本書は「満を持しての出版」だそうで、著者の意気込みが感じられます。
本書はタイトルからも分かるように、しばしば見本にされがちなトップ営業マンについて、逆に見習いすぎない方がよいということを全体を通じて主張されています。著者の主張は一貫しており明快です。
トップ営業マンを見習わない方がよいのは、あまりにも傑出している存在の真似をしようとしても、簡単に真似ができるわけもなく、かえって自信を喪失したりやる気をなくしてしまったりするからです。
このことは自己啓発書を読む場合にも当てはまるかもしれません。自己啓発書の著者はもともとパワーのある方が多く、普通の活力しかない多くの人がそのまま真似をしても長続きしません。
本書ではプロスポーツの例が挙げられていますが、イチローの真似をしてもイチローと同じようにはできません。
営業において商品や自分を売り込むことは、恋愛において男性が女性にアプローチすることとも似ていますが、三ケタの女性経験があるナンパ師の真似も容易にはできません。
最近は恋愛において草食系男子が話題になっていますが、本書は草食系営業マンの本と言えるかもしれません。基本は女性性で男性性少々という流れが各方面で世の主流のようです。
本書ではトップ営業マン、普通の営業マンそれぞれの実例が豊富に出てきますが、やはりエピソードとして面白いのはトップ営業マンの話です。読んで楽しいのは成功話ですが、ほとんどの人にとって役立つのは普通の営業マン向けのアドバイスです。なぜなら、ほとんどの人は普通の人だからです。
実際の営業の話についてですが、普通の営業のキーワードは「お役立ち」だそうです。具体的には以下の四つが挙げられています。
- お役に立つ商品を勧める
- お役に立つ情報を提供する
- お役に立つ提案を行う
- お客のよき相談相手になる
多くの人は現在営業の仕事はされていないと思うので、女性との付き合いに翻訳してみます。
- 女性に役立つ行動をする
- 女性が興味のある情報を提供する
- 女性の役に立つ提案を行う
- 女性のよき相談相手になる
ガツガツした感じがなく、まさに草食系ですが、ポイントは買い手の立場に立って相手にトクだと思われることのようです。このような関係を長期的に続けていけば、自然と販売に結びつくのでしょう。
本書では地道な営業の具体例について数多く書かれていますが、それらの本質は買い手にとって価値があるものをコツコツと提供し続けることです。これも男女関係に通ずるものがあります。
営業にしても男女関係にしても、コツコツ提供し続けるのはよいのですが、どこかで最終的な目的を心の片隅に置いておく必要があるのも同じです。しかしながら、大きな期待をせずに意識しておくというのは、そんなにやさしいことではありません。
売れないリスクを回避したり、期待を大きくしすぎないようにしたりするための手段は、営業先を多様化するしかないようです。余裕がないと自然に不利な状態になってしまいます。