2009年02月28日
『タオ・コード―老子の暗号が語り出す』
千賀 一生著 2009年2月28日発行 660円(税込)
タオ・コード―老子の暗号が語り出す 性の五次元領域から迸る秘密の力 (5次元文庫)
著者:千賀 一生
販売元:徳間書店
発売日:2009-02-11
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5次元文庫の新刊です。徳間書店か発行しているこの文庫のシリーズは、一般的には理解されにくいものが多いようです。本書も、このブログで紹介するのはどうかと思ったのですが、スピリチュアルな観点からセクシュアリティについて書かれている点が面白いので紹介させてもらいます。
アマゾンの内容紹介がよくまとまっているので、以下に引用します。
「中国雲南省の山岳地帯、老子の母の故郷とされる秘境を訪れた筆者は、そこで古代より秘蔵されている驚くべき史料、原版の老子書を手渡される。その他には、隠された老子の教え(聖なる性の秘儀)を純粋に継承し、生命の悦びに満ち溢れた人々の姿があった。世界で初めて明かされる老子書の全貌と、超意識へと覚醒した人々を追った衝撃のノンフィクション!原版の老子書/全訳付き。」
著者が遭遇された老子が原版かどうかなどは確認のしようがありませんが、それに基づいた老子の解釈は興味深いものがあります。たとえば、老子の一番最初の部分は以下のようになります。
「道可道非常道、名可名非常名。(道の道とす可きは常の道に非ず、名の名とす可きは常の名に非ず。)」
この出だしの部分の解釈は、本書に述べられている「裏の意」では以下のような性的な解釈になります。
「私は今から性の秘密について語ろう。かといって、あなた方がよく行う、うつろいゆくセックスについて語りたいわけではない。」
このような感じで、著者の体験とともに老子の解釈が語られています。
本書のキモは、老子という書物は性について一般には分かりにくいように述べられているということですが、この場合の性は単に男女のセックスだけを意味するのではありません。
身体的修行を伴った東洋の宗教においては、人間と宇宙とが一体化することが性のメタファーで語られることが多いのですが、本書もそのような意味で用いられているようです。
宇宙と一体化したときのエクスタシーは、通常のセックスで得られるものより純粋で強烈なようです。そのような体験が述べられている本としては、たとえば「あるヨギの自叙伝」「クンダリニー」「パワーか、フォースか―人間のレベルを測る科学」などといったものがあります。
身体的修行や心の変化によってもたらされる、少なくとも現象としては存在するこのようなエクスタシーの解釈については、いくつかの立場があると思います。一般的な科学的立場としては、脳内麻薬が多量に分泌されていると考えると思います。それを宗教的に意味づけるかどうかは、また別の問題です。
本書のような本が役に立つのは、人間が究極的に何を求めているかについて理解を深めることができるからです。お金、名誉、地位、権力、異性、自己実現など人間はさまざまなものを求め続けていますが、スピリチュアルな立場からすると、究極的に人間が求めているのは、宇宙との一体感ということになるようです。
なぜ宇宙との一体感を求めるのがよいかというと、それ以外のものはすべて儚いからです。移ろいゆく現実世界においては、お金、名誉、地位、権力、異性、自己実現などは一時的な満足感をもたらしてくれますが、それらは永続的な幸福をもたらしてくれません。
極端に言い切ってしまうと、それらのものは麻薬と同じようなものです。一時的な満足の後には、新たな渇望が生じます。
老子という書物は思想的・哲学的に解釈されることが多いのですが、自然との融合を中心とした身体論的な観点から解釈した方がよいのかもしれません。本書以外にも、最近出た本で比較的内容がしっかりしているものでは「気功で読み解く老子」という本もあります。
世俗的な欲求の根底には性的な欲求が潜んでいることが多いと思いますが、性的な欲求はさらにさかのぼると自然との融合感を求めているということになるのかもしれません。本書の立場を踏まえると、自然との融合はもともと性的なものであり、その不完全な形態が異性とのセックスになるようです。
本書は世俗的な成功だけでは幸福になれそうにないとどことなく感じている方が読むと、得られるところがある本であると思います。