2009年03月08日

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『文化に投資する時代』4

亀田 卓/寺嶋 博礼著  2009年2月28日発行  1365円(税込)

文化に投資する時代 (カルチャー・スタディーズ)文化に投資する時代 (カルチャー・スタディーズ)
著者:亀田 卓/寺嶋 博礼
販売元:朝日出版社
発売日:2009-02-27
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エンタテインメント→金融、金融→エンタテインメントとそれぞれ対照的な道をたどられたお二人の方による共著です。それぞれが担当された部分は以下のように別れています。

  1. 広告マンがエンタテインメントを証券化する
  2. 銀行マンが映画に投資する

前半は体験記的な読み物としての面白さがあり、後半は映画ビジネスについての分析的な点が参考になります。



前半部分が読み物として面白いのは、広告業界で長年働かれていた方が、全く知識のない分野に飛び込まれたときの驚きや新鮮さがそのまま表現されているからです。

金融について知識のない著者が、試行錯誤しながらさまざなエンタテインメントビジネスを証券化する過程は、証券化の知識が全くない人が証券化を学びつつ実践する過程であり、読みながら証券化というものについて学ぶことができます。

サブプライムローンが証券化された商品が今回の金融危機に大きく関係していたため、証券化という言葉はやや響きが悪くなりましたが、やはりビジネスを活性化するにおいて有用なツールであることには変わりないと思います。

そもそも株式も事業を証券化したものなので、証券化なしには資本主義が成り立ちません。今後のテーマは証券化を否定することではなく、証券化のルールを整備することであると思います。

本書の読みどころは、数字の世界から離れたエンタテインメントの世界をいかにして数字的な世界と融合したその過程です。本書ではそれぞれの世界の人同士の理解しにくさが書かれていますが、そのあたりも興味深いと思います。

本書ではどの程度細かい単位でビジネスを証券化することについて述べられていましたが、そこで感じたのは、日本では大きなリスクを取れる大きい単位のマネーがないことです。

日本では革新的な産業が起こりにくいですが、これは大きなリスクを取れる大口のマネーが少ないこともあるように思います。一般的に経済格差が広がるのは好まれませんが、格差が存在するメリットの一つとして、大きなリスクをとれるマネーが生じやすいということはあるかもしれません。

本書では著者が期待したリターンが得られそうにないときに大きく悩まれる様子が描かれていますが、著者が証券化で集められたお金は比較的小口で大きなリスクを取れないお金であったことも原因としてあるように思います。

著者の知り合いの先輩が借金をしてまで出資してくれた話が出てきますが、そのようなお金は大きなリスクにさらすことができないお金です。出資者がたとえば100億円くらい資産があるお金持ちであれば、著者も本書に書かれているほどには悩まれなかったかもしれません。

証券化はこれから日本でも発展する方が望ましいと思いますが、出資されるお金に広いリスク許容度が存在すると、より証券化が生きるように思います。これからの日本においては、どのようにしてリスクの取れる大口のお金を集めるかもテーマかもしれません。



investmentbooks at 23:57│Comments(0)TrackBack(0)clip!本--投資一般 

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
このブログについて
2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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