2009年04月21日
『100年に1度のチャンスを掴め!』
藤巻 健史著 2009年5月1日発行 840円(税込)
100年に1度のチャンスを掴め! (PHPビジネス新書 92)
著者:藤巻 健史
販売元:PHP研究所
発売日:2009-04-17
クチコミを見る
「伝説のディーラー」藤巻健史氏の新刊です。著者の本はしばらく出ていませんでしたが、今回の金融危機により、相場が著者の予測と反対の方向に動いていたためでしょう。
本書は昨年の9月から今年の12月にかけて月刊誌に連載されたものを、大幅に加筆・修正されているようです。著者の主張は変わらないのですが、金融危機のまっただ中での原稿のため、今回の金融危機についての記述が多くあるのが本書の売りであると思います。
藤巻氏の主張を御存知の方には書くまでもないのですが、氏のポジションはいつも資産インフレと円安です。今回の金融危機の前も、その最中も、そしてその後も主張は変わらないようです。
金融危機前の市場の状態がよかった頃に、著者と同じポジションを取られた方は、相場の下落によって現在かなりの損失があると思います。
今回初めて著者の本を手に取った方は、景気後退が長期化しなければ、その頃に本を読まれた方よりも運がよいのかもしれません。著者の本に書かれていることはどの本でも変わりないので、著者の本を読むときは、何が書かれているかよりも、いつ読むかの方がポイントです。
著者によると、今回の金融危機は著者の長期的な予測の調整期間に過ぎないようです。資産インフレと円安は著者の予測ですが、そうなったら日本の景気がよくなるという提言でもあるのでしょう。
資産インフレにしても円安にしても、著者の主張の本質は、日本円の価値を下げるのがよいということです。予測の根拠は日本国の莫大な負債です。
日本円を誰が一番持っているかというと、日本の高齢者です。そう考えると、円の価値を下げることは、高齢者が持っているものの価値を下げることになります。日本全体の富の総量は変わらないとすると、若い人に富が移転することになります。
藤巻氏というと円安と資産インフレですが、その主張の本質は高齢者から若者に富を移転することにあるのかもしれません。そうなると、富の総量は変化しなくても、高齢者から若者への富の配分の変化によって、日本という国が活性化する可能性は十分あります。