2009年04月25日
『ジョージ・ソロス 不滅の警句』
青柳 孝直著 2009年5月8日発行 1575円(税込)
ジョージ・ソロス 不滅の警句
著者:青柳 孝直
販売元:総合法令出版
発売日:2009-04-27
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ほぼ10年前に出版された『ソロスの55の言葉』が大幅加筆されたものです。ソロスの著作から箴言集のような形で抜き出されていますが、言葉の数は108に増やされています。
見開き2ページの右側はソロスの言葉が簡潔に書かれており、左側は著者が書かれた1ページ読み切りのコラムになっています。コラムの内容は、最近の日本経済や金融危機を中心とした世界経済についてです。ソロスの言葉は以下の四つのテーマに分けられています。
- 法則
- 社会
- 成功
- 信念
ソロスの言葉は含蓄が深いものばかりです。左側のページにある著者のコラムは、右側にあるソロスの言葉とほとんど関係がなく、独立した2冊の本があるような印象を受けます。もう少しソロスの言葉に関する著者の解釈や意見を読みたいところでした。
投資関連の箴言集といえば、バフェットのものがよく出ています。バフェットはユーモアやウィットに富んでいますが、本書にあるソロスの言葉は、哲学的・思想的な内容で、「厳しい」印象を受けます。
バフェットの言葉は株主総会でコーラを飲みながら気楽に話しているような雰囲気ですが、ソロスは自らの思想や信念に基づいて闘争をしながら語っているような雰囲気です。両者の雰囲気は異なりますが、言葉に深みがあるのは同じです。
いくつか言葉をピックアップします。
- 参加者は、自分たちにとって最良の利益に基づいて行動しているのではなく、「自分たちにとって最良の利益という認識」に基づいて行動しており、この二つのことは同一ではない。
- 私たちの社会は、成功が真実と美徳を兼ね備えたものであるかのように崇拝する。この考え方はアメリカでは主流であるが、間違いであると思う。
- 市場経済の主な利点は、資本の最適な配置を保証することではなく、人々に選択の機会を与え、自分の失敗から学ばせることである。
- 投資家の見地から言えば、(統計的な)可能性なんてどうでもいい。大切なのは個々のケースにおいて何が起きるかである。
ソロスの思想の根底には、人間は現実を完全には認識できないという無常観のようなものがありますが、本書にある多くの言葉からもそのことがよくわかります。
ソロスは市場を語ることを通じて現実世界を語っており、本書は人生論としても読むことができると思います。ただし、人生論として読むのは厳しすぎる面もあるかもしれません。
著名な投資家についての本は数多く出ていますが、傑出した投資家はみな個性的です。投資で高いリターンをあげるためには、多くの人々と同じように考えてはいけないからであると思われます。
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この記事へのコメント
本書は少なくともソロスの言葉の部分は参考になる点もあったように記憶しています。個人的に存じ上げないので、本書の著者については何とも言えないところです。