2009年04月26日

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『経済を動かす単純な論理』4

櫻川 昌哉著  2009年4月30日発行  1470円(税込)

経済を動かす単純な論理経済を動かす単純な論理
著者:櫻川昌哉
販売元:光文社
発売日:2009-04-24
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著者は大学教授で、本書は経済学部での講義ノートをもとにされているようです。と書くと難しい内容を想像してしまいますが、タイトルに「単純な論理」とあるように、本書はシンプルな語り口です。

本書で扱われているテーマも、以下の目次にあるように、タイムリーな話題を採りあげながらも、一般性のある内容になっていると思います。



  1. リスクを消滅させる法則
  2. 証券化の「光」と「影」
  3. 貨幣はバブルである
  4. 「バブル」をつかまえる論理
  5. 日本のバブルは崩壊していない

本書のテーマは、前半部分はリスク、後半部分はバブルです。両方とも現代の世界経済を理解する上で、キーとなる非常に重要な概念です。今回の金融危機も両方の概念に深い関係があります。

1章と2章は、ファイナンス理論やサブプライム問題についての本を読まれた方であればあまり新しい話はないかもしれませんが、後半のバブルについての考えは興味深いものがあります。

著者は貨幣自体をバブルであるとされていますが、本書の後半部分の理解はこの考え方が基本になります。一般的なバブルの概念より広い定義です。

本書ではこの考えをもとに、貨幣に加えて、国債、土地、株式なども「バブル」とさています。「バブル」というと一般のバブルの概念と異なるのでややわかりにくいのですが、この場合は人が価値があると思っているものと考えるとよさそうです。

明日地球が滅亡するとしたら、価値がなくなってしまうものと考えるとわかりやすいかもしれません。

興味深いのは、日本ではこれらの貨幣、国債、土地、株式の価値を合計したものをGDPで割った値が、この15年間ほぼ一定であるということです。そこから、著者は日本の土地のバブルは国債のバブルによって吸収されていると書かれています。

日本の地価と株価が下がり続けるのは、国債の残高が増え続けているからということになります。もしも著者の考えが正しいとすると、最近の景気対策による国債残高の増加により、長期的な地価については悲観的になってしまいそうです。

この考えに対しては、さらに深く掘り下げてみる必要がありそうですが、貨幣やバブルについて考えるための一つの新たな土台が提供されていると思います。

本書に出てくる話では、配当と株価の関係や、先物の価格を決める要因などについてやや疑問に思うこともありましたが、全体としてはシンプルさとわかりやすさに満ちています。バブルについて一歩深く考えたみたい方とって、本書は興味深い本であると思います。



investmentbooks at 22:30│Comments(0)TrackBack(0)clip!本--経済学 

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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