2009年06月22日
『凡人起業―「カリスマ経営者」は見習うな!』
多田 正幸著 2009年6月20日発行 714円(税込)
凡人起業―「カリスマ経営者」は見習うな! (新潮新書)
著者:多田 正幸
販売元:新潮社
発売日:2009-06
クチコミを見る
発売直後に読んだのですが、本紹介の更新ペースを下げたので、紹介が遅れてしまいました。著者は税理士事務所を開業されている方ですが、それ以前に大手企業のサラリーマン、独立・自営、中小企業のサラリーマンとしての経験をお持ちです。
本書では、起業、独立開業、自営について税理士としての立場からも少しは解説されていますが、大部分は御自分のキャリアを元にしてそれらのことについて述べられており、そのあたりが本書の価値を高くしていると思います。
本書の各章のタイトルは以下の通りです。
序章 嫌がる社員を慰安旅行に連れて行く
第一章 「独立開業本」に、必要な情報はない
第二章 必要な情報へのたどり着き方
第三章 「業界の不思議」を見極める
第四章 「経営」という言葉に酔うな!
第五章 税理士に経営指導を仰がない
第六章 実際の社長さんはこんな人たち
終章 私の反省
起業については夢を持って明るく語られることが多いのですが、本書では起業の厳しさの現実が語られています。
起業は華々しいイメージがあるのですが、実際は日常業務がほとんどであり、何はともあれ売り上げを上げないと何も始まりません。
一般的な起業本には独立開業の事務手続きについて書かれているのですが、実際に重要なのは何かを売ってお金を得ることです。本書にはそのあたりの事情や厳しさが詳しく書かれています。
タイトルに「凡人」とあります。本書の中心軸になるテーマになっていると思いますが、中小企業の社長さんは「変人」が多いとのことです。「凡人」とは「ずれた感覚」を持ち、「少し変わった人」であると表現されています。
どのように変わっているかは本書に詳しく書かれていますが、税金の本をよく書かれている元国税調査官の大村大次郎氏も、御自身の税務調査の経験を元に、中小企業の社長さんをたしか「合理的な変人」といったように表現されていたことを思い出します。
以前にも書いたと思いますが、これはやはり人間社会の仕組みが、常に変化している環境にいち早く適応しようとする少数の変わり者によって残りの人々がリードされるという構造になっていることと関係していると思います。どちらが上でどちらが下といったような問題ではなく、あくまで役割の違いです。
起業して中小企業の社長になるのであれば、この構造を認識して自分の適性をある程度は把握しておく必要があるというのが、著者が伝えたい骨子であると思います。
創業者の自伝や伝記を読むとよく分かりますが、世間一般的な尺度で考えると、やはり「変人」の方が多いようです。その変わったところがそれらの本を面白くしている部分です。ソフトバンクの孫社長について書かれている本などがわかりやすい例です。
「変人」でないからといって著者は起業をやめるようにいわれているわけではなく、起業するにしても自分を知ってから起業した方がよいということのようです。「変人」でなければ「変人」でないなりに、他の方法もあるようです。
本書は起業を考えている人にはもちろんすすめることができる本ですが、中小企業の会社の仕組みを理解する上でも参考になる本であると思います。とくに「うちの社長は変わり者で困ったものだ」とふだんから思っている方(多くの方はそう思っているかもしれません)が読むと納得できる部分が多いことでしょう。








