2009年06月23日
善意のアドバイス
何か新しいことを始めようとすると、まわりの人がアドバイスをくれることがあります。自分でも迷っている場合などは、自らアドバイスを求めることもあるでしょう。
アドバイスをくれる人の多くは、自分と対等か、あるいは自分よりも人生経験が多い人がほとんどです。具体的には、友人、同僚、上司、親などになります。
新しいことを始めるということは、大なり小なりリスクを伴います。リスクが小さくなさそうな場合は、善意から「やめておいた方がいい」「君のためを思って」などというアドバイスをもらうこともあるでしょう。
このようなアドバイスに対しては、その善意に対する感謝や尊重の気持ちを持ちつつスルーするのが一番です。これにはいくつか理由があります。
まず第一に、そのアドバイスをくれた人は、やりたいことができなかったことに対する責任を取ってくれないからです。最も多いのは、親がアドバイスするパターンです。
人生を賭けて何かにチャレンジしようとして、親に反対されて止めたとしましょう。親の言う通り無難につつがなく人生を送ったとします。現代では親が亡くなるくらいの年齢になると、子どもも人生の中〜終盤にさしかかっていることが多いと思います。
その時に人生を振り返ってやりたいことができなかったことに後悔しても、親はすでにいなくなっています。満足するのは親だけです。
第二に、新しいことをして失敗したとしても、できなかったことに対する後悔は残らず、さらに失敗から多くのことを学ぶことができるからです。
人生の後悔の多くは、失敗したことではなく、やりたかったことができなかったことです。若い時代をもう一度過ごせるなら、失敗してもかまわないので思いっきり昔やりたかったことをやろうと思っている高齢者の方は多いのではないでしょうか。
思い切って告白して振られたことを後悔している人は少ないと思いますが、想いを伝えられなかったことに後悔が残っている人は多いことでしょう。恋愛に限らず、仕事なども同じです。
失敗から学ぶことは多く、本当の成功というものを自分の成長と考えると、人生の成功はいかに数多くの失敗をしたかで決まることすらあるかもしれません。
第三に、止める方がよいというアドバイスは、止めるようにアドバイスしている内容のことについて、そのアドバイスをくれる人が無意識に抑圧していることが多いからです。
自分がその抑圧を取ることに対する抵抗があるので、近くにいる人がその抑圧を取るような方向で行動し始めると、「善意」からその人を自分と同じ状態にとどめておきたい無意識の心の働きが生じます。
抑圧傾向にある母親が、「やっぱり女の子は平凡が一番よ」と言って、娘の行動を「娘のことを思って」抑圧するパターンがよくあります。母親は、少なくとも意識の上では、本当に娘のことを思っています。
アドバイスをしてくれる人が一生懸命であればあるほど、相手のためを思っているような口調であればあるほど注意する必要があります。自分のアドバイスを聴かないことに怒るようであれば、さらに要注意です。
「善意」の人が要注意なのは、善意が前面に出れば出るほど、そのアドバイスの底にある否定的な側面が見えにくくなるからです。自分のことを一生懸命に思ってくれる友人などのアドバイスは無視しにくいものがあります。
それでもアドバイスが気になる場合は、その人がどれくらい幸福感を感じつつ生きているかを参考にするとよいでしょう。人はいろいろなことを語りますが、その内容はその人の限界を越えることはありません。
そもそも本当に幸福な人は、抑圧的なアドバイスをすることはほとんどありません。幸福を感じている人は抑圧が少ないからです。
アドバイスの問題を逆に考えると、自分が友人などに何かを止めるようにアドバイスしたくなった場合は、なぜ他者の行動を抑圧したくなるかを考えてみる必要があります。思いが強ければ強いほどその必要があると思います。
アドバイスに限らず、人が人に関わりたくなった場合には、何らかの理由があると思います。人に対する思いから自分を振り返ることができます。
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この記事へのコメント
ブログ楽しみに読んでいます
>>そもそも本当に幸福な人は、抑圧的なアドバイスをすることはほとんどありません。幸福を感じている人は抑圧が少ないからです。
考えたことがなかったのですが、
幸福感と抑圧感は、関係があるのですね。
わたしは、10年ちかく摂食障害で、
なかなか落ち着いて読書もできなかったので(笑)、
最近は本が読めて楽しいです♪
一般向けの精神医学系?心理療法系?の本も、機会がありましたら、ご紹介くださるとうれしいです。
いつも拝見しております。
今回はなんだか私の思っていることをそのまま書いていただいたような気がしてしまいました。
特に母親との関係です。
私の母親はまさしくこういう感じの人です。
なんでもかんでも「やめなさい」という人だったので。
今になって思うのは、もっと自分の意志を通せばよかったということです。
今もしこういう問題で悩んでいる人がいれば、親の意向より自分の気持ちを大事にしてほしい。
自分の人生は自分で描かなければと思います。
はじめまして。ブログをお読みいただき、そしてコメントいただきありがとうございます。
基本的に人間は抑圧がないと、幸福感を感じるのが自然な状態と思っています。
読書を楽しめるようになられたとのことでなによりです。大変であっただろうことをお察しします。
リクエストいただいたジャンルの本は今までほとんど紹介していなかったのですが、機会があれば紹介してみたいと思います。
>チャウ子さん
いつもお読みいただき、またコメントいただきありがとうございます。
親の影響、とくに同性の親の影響は強力なので、時期が来ないとその影響を受けていることすら認識できないことが多いと思います。
本来人生は真っ白なキャンバスに自由に自分の好きな絵を描くものだと思うのですが、いつの間にか下書きの塗り絵をするようなものになってしまっています。
お書きの通り、若い方にはとくに自由に生きてもらいたいと思います。