2009年07月09日
『若者は、選挙に行かないせいで、四〇〇〇万円も損してる!?』
森川 友義著 2009年5月18日発行 1050円(税込)
若者は、選挙に行かないせいで、四〇〇〇万円も損してる!? (ディスカヴァー携書)
著者:森川 友義
販売元:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2009-07-07
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本書は、日本の若者の政治リテラシーを高める目的で書かれている本です。サブタイトルに「35歳くらいまで」とありますが、生きた政治学の入門書として、それ以上の方が読んでも得るところが多いと思います。ふだん政治にあまり興味がない人ほど、本書を読むことに意味があるはずです。
本ブログでもたまに紹介していますが、経済学の啓蒙書はすべてを把握しきれないくらいに次々と出版されています。しかしながら、なぜか政治学の啓蒙書はほとんどありません。
本書は政策について述べられている以下の本と姉妹関係にあるようです。
どうする!依存大国ニッポン (ディスカヴァー携書)
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経済学と比べて政治学の啓蒙書があまり出版されないのは、あまり売れそうにないからということがあると思いますが、そのことも政治に対する関心の低さを表しているのかもしれません。
本書には、一般の人がどうして政治に無関心になりやすいかなど理論的なことについても述べられています。理論的なことがわかりやすく述べられていることは本書の読みどころの一つですが、それ以外にも現在の日本における政治の現状についても説明されています。
現在の日本の政治のあり方を大きく規定しているのは、本書によると、政治家である国会議員、特別利益団体、そしてなによりも官僚組織ですが、それらの現状について丁寧に解説されています。
これらのことについては、テレビや新聞などのマスメディアではあまり報道されません。なぜなら、マスメディアもさまざまな力学が働いており、積極的には伝えにくいことがあるからです。
多くの若者はテレビなどのマスメディアからほとんどの情報を得ていることも、本書に書かれているような情報から距離ができてしまう理由の一つであると思います。
本書を読むと、現状の若者が政治に関心がなく、そのために損をしている現在の状態は、なるべくしてそうなっているということがわかります。
政治家にしても、特別利益団体にしても、官僚の方々にしても、マスメディアにしても、自分の利益を最大にするために行動しているだけです。人間に過度に利他的になることは、あまり期待しないほうがよいと思います。
若者が現状を変えるためには、現状を知って自分たちの利益を最大化するために行動するしかありません。もともと民主主義は個々人の意識が低ければ、衆愚政治になりやすい弱点を持った制度です。
日本を大きな株式会社と考えると、特別利益団体や高齢者は大株主、官僚は大株主かつ経営者、政治家は執行役員、そして若者は一人一株しか持っていない弱小な個人投資家といったところです。
若者の意向が反映された政治になるためには、一人一人の若者が政治的な意識を高めることにより結集して大株主になるしかありませんが、本書は少しでもその流れを創り出そうという願いが込められていると思います。
本書を手に取るような若者は、もともと問題意識の強い人でしょう。問題は本書を手に取りそうにない若者に、本書にあるような内容を理解して問題意識を持ってもらうかです。
政治的なことに関心が持てるようなメルマガを一千万人くらいの若者に読んでもらえるようなシステムがあるとよいのでしょうが、何か核が必要であると思います。
政治に関わることが、かっこいい、楽しい、役に立つ、面白い、得になるなどというイメージを創り出せればよいと思いますが、そのためにはカリスマ的な存在が必要かもしれません。
本書をきっかけにして、若者の政治に関する興味が少しでも生じ、政治に主体的に関わることによって自分たちで未来を創造できるという自信を持つことができ、若者の多くが抱く閉塞感が解消され、日本の将来が明るく希望に満ちた方向に向かうとよいと思います。