2009年07月18日
『長期投資家がニヤリとする7つのメガトレンド』
澤上 篤人著 2009年7月25日発行 819円(税込)
長期投資家がニヤリとする7つのメガトレンド (角川SSC新書)
著者:澤上 篤人
販売元:角川SSコミュニケーションズ
発売日:2009-07
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著者は有名な独立系投信である「さわかみファンド」の運営をされている方です。過去にも、株式投資についての数多くの本があります。
本書はタイトルに「メガトレンド」とあるように、今後の世界経済、日本経済における今後の大きな潮流についての著者の見方が述べられています。各章のタイトルは以下の通りです。
- 金融の時代が終わり、実物経済の時代へ
- 本格的インフレというメガトレンド到来
- 新興国の成長で、資源、食糧、環境すべてに投資不足
- 日本の産業構造が激変するのもメガトレンド
- 機関投資家の運用にも厳しい環境が待っている
- 個人金融資産は預貯金指向から投資へシフト
- 日本の金融ビジネスに地殻変動と新風が
著者の本を過去に読まれたことがある方は、章のタイトルから本書の大まかな内容が想像できるかも知れません。
大きな資金を運用している投資家の本を読むと、なぜそのようなポジションを取っているかの理由の説明になっていることが多いのですが、本書もそのような印象を受けます。
著者が実際にそのように思われているということもあるでしょうし、希望的な観測もあります。さらには、その見方を世の中に広めることによって、自分の予想している流れをさらに強化しようということもあるかもしれません。また、自分のところに資金が集まるようにするマーケティング的な意味合いもあるかもしれません。
これらは渾然一体となっているので、どれが主ということはありません。著名な投資家の意見は傾聴して参考にした上で、その立場に賛同するかどうかは個々人の判断になります。
今後の予測についての本書のキーワードはインフレです。インフレの根拠は新興国の持続的に予想される発展・成長のようです。
株式投資は一般的にはインフレに強いといわれいますが、インフレによって企業のコストが上昇すると利益が圧迫されるので、短・中期的には必ずしもプラスの働きだけではありませんが、長期的には現金や債券よりはインフレには強いはずです。
日本人は昔から金融資産に占める現預金の割合が大きいので、世界的にインフレ傾向になるとすると、資産の実質的な価値は減価してしまいます。
もしも株式が現預金よりインフレに強いということが一般的に認識されるとすると、本書に書かれているように、日本人の現預金は株式や土地に避難的に移動するということもあるかもしれません。
資産を株式として運用する方は、将来に対して楽観的な印象がありますが、本書からも同じ印象を受けます。過度に楽観的になるのはよくないとは思いますが、適度な楽観性は社会の発展に必要な要素であると思います。