2009年08月21日

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『シルビオ・ゲゼル入門―減価する貨幣とは何か』4

廣田 裕之著  2009年6月25日発行  1890円(税込)

シルビオ・ゲゼル入門―減価する貨幣とは何かシルビオ・ゲゼル入門―減価する貨幣とは何か
著者:廣田 裕之
販売元:アルテ
発売日:2009-06
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本書のタイトルになっているシルビオ・ゲゼルは1862年生まれなので、100年くらい前の人になります。実業で成功した後、経済学の研究を独自で行い、サブタイトルにあるような「減価する貨幣」などいくつかの考え方を提唱された方です。

お金についての本は、ほとんどがHowの視点で書かれていますが、貨幣自体のあり方についてさかのぼった視点で書かれている本はあまりありません。本書はそのあまりない本のうちの一冊になります。



本書の目次は以下の通りです。

  1. シルビオ・ゲゼルとその時代
  2. 自由土地と母親年金
  3. 現代の通貨制度とその問題
  4. 減価する貨幣とは何か
  5. 自由土地や自由貨幣をめぐるその後の動き
  6. まとめ---私たちに残された課題

シルビオ・ゲゼルは100年くらい前の人であり、当時の貨幣をめぐる時代背景は現代と異なっている点も多いので、その考察をすべてそのまま現代の状況に当てはめて考えるわけにはいきませんが、そのエッセンスは現代でも応用できるかもしれません。

本書に書かれていることは、物理学でいうところの思考実験のようなものであり、実際に大規模に実践するのは短期的には困難な点もあると思います。ただし、貨幣の理想的なあり方を考えて議論することは、時間をかければ遠い将来に貨幣制度を変更できる可能性もあるかもしれません。

貨幣が減価するとよいのは、利子による所得の偏りが少なくなったり、世の中のお金の流動性が高まって経済が活性化しやすいことなどがあるようです。デフレの状況などを考えると、貨幣が減価することの重要性がわかりやすいかもしれません。

本書にある方法とは異なりますが、政府が紙幣を発行すればインフレが生じ、貨幣は減価します。本書では減価させた部分を政府が回収することになっていますが、通貨を発行して通貨発行益を政府が得れば回収するのと同じことです。

ただし、貨幣を減価させるとすると、世界全体で足並みをそろえる必要があると思います。たとえば、日本の貨幣だけが減価すると、お金は海外に逃避してしまうことでしょう。

本書を読むとさまざまな疑問が湧いてくるのですが、その疑問を足掛かりにしていろいろとお金について空想するのは面白いと思います。

本書には、減価する貨幣のみならず、すべての土地を国有化することや子育てのための「母親年金」についても述べられており、規模は異なりますが、民主党の育児手当と少し関係している部分もあり興味深く読めます。

お金の存在は人間の不安と強い関係があるので、本書のような革新的なアイディアを現実に適用するのはやや困難な部分があると思いますが、お金の本質を考える上で、思考実験的に考えるのは意味があることでしょう。



investmentbooks at 23:58│Comments(2)TrackBack(0)clip!本--経済学 

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この記事へのコメント

1. Posted by 天国への階段   2009年08月23日 01:07
5 はじめまして、いつも本を買う時の参考にさせてもらってます。
さっそく質問なんですが、最近「ザ・シークレット」に代表させるような“思考したことは現象化する”のような引き寄せ本がブームですよね?
こういうのって心理学的にはどう解釈されます?
とくに最近出版されたこの本↓
http://www.amazon.co.jp/gp/aw/d.html/ref=redir_mdp_mobile/377-4462069-3219103?uid=NULLGWDOCOMO&a=4062156180
は、世の中は全て自分の思考の投影であり、それぞれ個人が思考した世界を創造しているにすぎない、
これは最新の心理学で研究されている事実‥みたいに言い切っているのですが、本当ですか?
もしよろしかったら分析お願いします。

あと、これも最近日本で話題になっているハワイ州立病院の心理セラピストである、
ヒューレン博士が実践している「ホ・オポノポノ」という心理療法知ってます?
私のような凡人には、にわかに信じられないような驚愕な内容なんですが、
このような現象は心理学的にはありえるのでしょうか?↓
http://irodori0220.blog.drecom.jp/m/archive/295
2. Posted by bestbook   2009年08月23日 23:35
天国への階段さん、はじめまして。コメントありがとうございます。

“思考したことは現象化する”という考え方は最近ブームですね。

思考が世界を創り上げるという考え方を科学的に研究している方はいると思うので、研究されていることは事実であると思いますが、その考え方が事実かどうかについてのコンセンサスはないと思います。

思考が世界を創り上げているということが正しいとすると、科学はその世界の一部なので、一部である科学が、思考が世界を創り上げているということは証明できないかもしれません。

ただし、証明できないからといって正しくないということが言えるわけでもありません。

人間のこころが関係する問題は定量化しにくいので、科学的とあまり相性がよくありません。

「ホ・オポノポノ」についても、問題の本質は同じです。

個人的には人間の想念が世界に何らかの影響を与えるとは思っていますが、これを人に説明して納得してもらうことはできません。最終的には信じるかどうかになります。

人間の思考が世界を創造するかどうかということを信じるかどうかについては、結局その人がどちらの世界観を信じるのが楽でいられるかによって決まると思います。

自分としては、人間の思考が世界を創造すると考える方が楽しくしっくりくるので、その考え方でいますが、別の人が反対の考え方をしていても、その人にとってはその考え方が楽なのだろうと思うだけです。否定も肯定もしません。

この問題は結局のところ、悟りのような宗教的な問題とも関係があるので、科学だけ、少なくとも現代における科学だけでは、すっきりと解決できない問題です。

今後時代が進むと、新たな視点が生まれるかもしれません。

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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