2009年08月27日
『9・15 リーマンショック---その時トップはどう動いたか?』
片山 修著 2009年9月5日発行 819円(税込)
9・15 リーマンショック (祥伝社新書174)
著者:片山 修
販売元:祥伝社
発売日:2009-08-26
クチコミを見る
サブタイトルからは、リーマンブラザーズのトップがどう動いたかについて書かれているようにも思われますが、本書は日本企業のトップがその前後にどのように考えて対応したかについてのインタビューを著者がまとめたものです。
本書は、まもなく近づきつつある9月15日のリーマンショックに合わせて刊行されたと思われます。アマゾンの紹介ページから、インタビューを受けた方々は以下の通りです。
細谷英二――りそなホールディングス会長
林田英治――JFEスチール社長
竹中平蔵――慶應義塾大学教授
木下光男――前トヨタ自動車副社長
斉藤 惇――東京証券取引所グループ社長
上田良一――三菱商事常務執行役員
堀新太郎――ベインキャピタル・ジャパン会長
ほとんどが日本を代表するような大企業のトップの方です。新聞などでは、これらの企業が対応した結果や業績についてのみ目にしますが、本書を読むとトップの視点から眺めた内部の雰囲気がある程度伝わってきます。
それはそれで参考になりますが、やはり本書のような本はある程度のバイアスがあるのは仕方ありません。
本書は、社会的な地位が非常に高い方々に、著者側からお願いして本になっているので、トップが経営責任を問われているような企業にはインタビューの話をしないでしょうし、インタビューをまとめるときも当然のことながらかなりの気遣いがなされているはずです。本書を読むときは、そのあたりを割り引くとよいと思います。
リーマンショックをアメリカ政府が防いでいれば、金融危機はこれほど深刻化されていなかったと最近はまとめられつつありますが、本書にもあるように、金融危機はリーマンが潰れたことよりも、アメリカの下院で公的資金を注入する法案がいったんは否決されたことの方が大きな原因になっているかもしれません。
そもそもリーマンを潰さなければ、それはそれで別の問題が生じていた可能性もあります。ものごとの評価は、実際に起こったことの否定的な側面にスポットが当てられることが多いのですが、別の選択をしていた場合に生じ得た否定的な側面は忘れられがちです。
政治家などが大きな選択をするときは、どちらを選択してもその選択によって不利益を被る人々から悪く言われるのは避けられません。政治家などの選択は、どちらによく言われるかより、どちらに悪く言われる覚悟をする選択をするかという要素の方が強いかもしれません。
リーマンを破綻させなければ、アメリカの政治家はモラルハザードなどと別の非難を浴びていたことでしょう。歴史は人間の必ずしも公平でないゆがんだ認知をもとに、その後の利害や権力の関係などの修飾を受けて作られ続けます。
金融危機はまだ完全に収束したとは言えませんし、これからの展開によっては、今回の金融危機についてのこれまでの解釈も、また作り直される可能性があると思います。