2009年08月31日
『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』
神保 哲生著 2009年7月2日発行 1500円(税込)
民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?
著者:神保 哲生
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2009-07-03
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選挙は事前の予想通り民主党圧勝でした。民主党勝利の可能性が濃厚になり始めた頃から、大型の書店では民主党関連の書籍コーナーが目立つようになりましたが、本書はそれらの書籍の一冊です。
それぞれ独自の視点から書かれていますが、民主党の政策を理解する上では、本書が最もわかりやすくまとまっていると思いました。2ヶ月弱近く前からある本ですが、選挙の結果を受けて紹介します。本書は以下の20の項目に分類され、全部で99の政策について解説されています。
- 子育て
- 教育
- 社会保障
- 雇用
- 医療・介護
- 食の安全
- 政治制度改革
- 選挙制度
- 公務員制度改革・行政改革
- 財政・予算
- 外交・安全保障
- 地方分権
- 税制
- 産業・金融政策
- 農業
- 法務・司法
- 人権
- メディア
- 環境
- 歴史認識・憲法
子ども手当など、目玉となるような主だったマニフェストは新聞やテレビなどで繰り返し紹介されていますが、以上の20項目について細かく知るには本書は最適です。
本書の序章における著者の解説によると、民主党の理念は以下の五つにまとめられるそうです。
- 情報公開
- 公平・公正と機会均等
- 安心・安全
- 地方分権
- 包摂と参加
本書を読むと、民主党の政策は理想論的なものもありすべてがスムーズに実現するとは思えないのですが、はじめて政権を取るだけあって、政策に一貫性が感じられます。
そのような意味においては、今回の選挙結果は政権交代というよりも、政治の一新と考える方がよいのかもしれません。よい方に考えると理想に燃えていると言えますし、悪い方に考えると若者のような青さが感じられます。
おそらく国民が求めていたのは、よくも悪くも政治の若返りだと思いますが、民主党がそのイメージを国民に与えることができたのことが、今回の大勝に結びついたのかもしれません。
国民の期待が今回の結果を導いたと思いますが、民主党への期待は適度でよいと思います。最初から過度に期待していると、途中で挫折したりスムーズに行かなかった場合の失望感も強くなってしまいます。大勝はしましたが、過剰に大きな期待はされていないということでよいと思います。
4年前の郵政民営化の選挙の時は、今回と比べてかなり盛り上がり国民の期待が大きすぎたため、その後の自民党に対する失望感が大きくなり、今回の大敗につながったように思います。
民主党の目玉となる政策のうち、子ども手当は少子化対策のためによい政策であると思います。15歳になるまで毎月2万6千円ということは、現在価値などは考えないとすると、子どもが生まれた瞬間に468万円が確定します。
実際には、現在価値に割り引いたり、政策が変更される可能性なども含めて考える必要がありますが、子供が生まれた瞬間に一時金も合わせて500万以上のお金が、時間をかけてですが、もらえるとなると、ある程度は少子化対策に効果があるのではないでしょうか。
民主党の経済対策については、本書を読む限りではあまり目を引くものはないのですが、しばらくは日本全体の沈滞した雰囲気を理想論的な雰囲気で建て直す期間があってもよいかもしれません。
民主党の政策は、効果が出るまでに時間がかかるものが多く、その理念が発揮されるためには、ある程度の時間がかかるでしょう。
民主党の政策によって日本が良い方向に向かうかどうかは、どれくらい経済を活性化して長期的な政権を維持できるかや、実際に約束通り政策が遂行されるかにかかっていると思います。
小泉政権の時に構造改革という言葉がキャッチフレーズになりましたが、官僚制度の問題にまで踏み込んだ民主党の政策が遂行されると、当時の構造改革より本当の意味での構造改革になるのではないでしょうか。
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この記事へのコメント
子供手当は勤労意欲の低下をもたらし、親の遊行費に消える可能性が高いのでは。
また、手当をもらえない人(子育て終了世代)たちとの対立を招くのではと思います。
実際、車の中に子供を置いたままパチンコしている親とか、給食費を払わない親とかいるのは事実。
友愛精神とかで、人の善意を信じ、子供手当てで子供を愛する人が増えるというのはちょっと?
外国人が子供手当目当てで大挙して来たらどうするんでしょう。
まあ結果を見守るしかありませんが。
いつもお読みいただきありがとうございます。
たしかにお書きの通り、親が自分の欲求を満たすために手当を使ってしまうことも多いと思います。そのあたりは今後問題になってくるはずです。
ただし、実際にそれなりに子どもの養育や教育に使われることも多いと思います。国民一人一人にお金の使い方を委ねるのは、お金のあり方としてはハイリスクになりますが、その分リターンが大きくなることも期待されているのかもしれません。
子ども手当が出ると、お書きの通り友愛精神が盛んになることはないと思いますが、損をしたくない、あるいは得をしたいため、損得の問題として、出生率が上がるかもしれません。
世代間の対立や外国人については、今後議論が盛んになるかもしれません。しばらくは見守るしかないと思います。
>まるこさん
今回の民主党の子ども手当は、子どもをお持ちの方、あるいはこれから持とうとしている方にとっては朗報ですね。
上の斎藤さんもお書きのように、その手当の有効な使い道は一人一人の親に国から信頼されて託されています。与えられて権利が増えた分、その有効な使い道については個々人に責任が生じるので身が引き締まる面もありそうです。将来の日本を担うお子さんに、有効に投資していただければと思います。
コメントいただき、そして記事を御評価いただき、ありがとうございました。