2009年09月07日

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『目覚めよ!借金世代の若者たち』4

アーニャ・カメネッツ著  山村 宜子/ライス山村 直子訳

2009年7月6日発行  1995円(税込)

目覚めよ!借金世代の若者たち目覚めよ!借金世代の若者たち
著者:アーニャ カメネッツ
販売元:清流出版
発売日:2009-06
おすすめ度:5.0
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本書はピューリツァ賞にノミネートされ、アメリカで大きな反響、とくに若い世代に大きな反響があった本のようです。女性である著者は本書を書いた時点では、まだ25歳くらいの方です。

本書も借金世代の若者の当事者として書かれており、そのあたりが共感を呼んだのかもしれません。本書の目次は以下の通りです。



  1. なぜ、借金世代なのか?
  2. 借金でまかなう大学生活
  3. 低賃金の職業
  4. テンプ(非正規雇用)
  5. 医療保険も失業手当もなく・・・
  6. 連邦政府のまやかし---赤字、社会保障、メディケア
  7. 家族のトラブル---愛情と自立
  8. 目覚めよ、そして行動せよ
  9. 将来を見つめて

本書はハードカバー版が発売されて反響が大きかったため、すぐに出たペーパーバック版で最終章が追加されています。

昨日は韓国の格差社会についての本を紹介しました。本書のテーマは少し異なり、アメリカにおける世代間格差がテーマになっています。

世代間格差については、日本でも最近よく話題になりますが、本書を読むとアメリカでの方が程度が強いようです。その理由は、大学などの教育費が高いことや、医療費が高いことなどがあります。

アメリカでは大学に進学するために、多くの人は自分でローンを組むようですが、日本円にして大体数百万単位になるようであり、場合によってはさらに多いこともあります。

若者が健康に大学を卒業して、ある程度の暮らしができるようになるためには、さまざなハードルや莫大な経済的負担が必要とされます。著者の視点では、これは高年者による若者の搾取ということになります。

このような状況の原因には、グローバリゼーションがあるようです。アメリカの大学は世界中から数多くの人が殺到するので、需給関係により学費が高くなってしまいます。

日本ではグローバリゼーションにより労働賃金が下がっていますが、それによって大学の授業料が高騰していることはありません。ただし、昔に比べると高くなっていることは確かです。

日本では国が借金をしており、個人のレベルではアメリカほど借金をすることはありません。でも若い世代にツケを回しているという点では同じです。日本の方が構造としては分かりにくくなっています。若者から高年者に富が移転しているというのは、日本だけでなく世界的な現象のようです。

著者も解決策を述べていますが、やはり若者が問題意識を持って政治的な活動をするのがよいようです。しかしながら、問題は日々の生活に追われるほど忙しければ、問題意識すら持てないことです。

本書を読んで思うのは、やはり医療費と教育費は需給だけで決めない方がよいということです。その理由は、医療は病気になることに対する不安を少なくするため、教育は将来の希望とチャンスを与えるためです。

本書は日本の現状と比較して読むと興味深いと思います。非婚化などは日本の方が進んでいる面がありますが、全体としてみるとまだまだ日本の方が暮らしやすいように思います。

やはり今後の世界全体のテーマは、いかに競争によるダイナミズムを保ちながら、資源をより平等に配分するかであると思います。

問題を難しくしていることの一つは、グローバリゼーションによって世界が一つになっているのに、国がたくさんあることです。方針がなかなか統一できませんが、お金の流れだけが独自の統一的な仕組みで移動してしまいます。



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この記事へのコメント

1. Posted by マリンゾウ   2009年09月08日 20:16
高齢化がすすむわが国では若者につけを払わすわけにもいかず、少子化はとまりそうにありません。
労働力の安い国に高齢者の方が移住(通貨差でリッチな暮らしと医療)するしかないですかねえ。
教育費を自身で払うような意識もないですしねえ。
普段から(私を含め)意見などないですから、風で決まってしまいますし。
2. Posted by bestbook   2009年09月09日 02:34
マリンゾウさん、コメントありがとうございます。

少子高齢化問題は何とかしないといけない問題ですが、国債の大量発行などによってだましだまし来ているので、問題の深刻さがわかりにくくなっていますね。

高齢者が外国に移住してしまうと、高齢者に伴って金融資産が国外に流出してしまうので、若者に借金だけが残ってしまうことになるかもしれません。

今のところは高齢者が銀行や郵貯に預けているお金で日本の国債の多くがファイナンスされているので、将来的に若者がその資産と負債を両方受け継ぐとしたら、まあチャラかなとも思っています。高齢者がお金を使い切らなければの話ですが。

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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