2009年09月11日

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『楽しい騙しのインテリジェンス?』5

伊東 乾著  2009年9月25日発行  882円(税込)

楽しい騙しのインテリジェンス?―マリック直伝!サギのイロハと撃退法 (モナド新書)楽しい騙しのインテリジェンス?―マリック直伝!サギのイロハと撃退法 (モナド新書)
著者:伊東 乾
販売元:にんげん出版
発売日:2009-09
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著者は作曲家や指揮者などの音楽家であり、大学の教官もされています。過去に幅広いジャンルの本を書かれていますが、本書も非常にユニークな本です。

著者は小学生の頃、当時は無名のMR.マリック氏に手品を数年間にわたり習われていたそうです。本書の半分くらいはMr.マリック氏との対談になっています。本書の章のタイトルは以下の通りです。



  1. 「懐中物にご用心!」マジックは心の劇薬
  2. 円天、騙しのインテリジェンス
  3. マジックを小学校の必修科目に!
  4. サブプライムも世界不況も本質は信用詐欺
  5. 大人に夢を見せる大切さ
  6. 感情は理性より素早く意思決定する
  7. 「夢なき社会」が陥る「不況」
  8. 「笑わせて驚かす」全脳型サプライズ
  9. アートの不思議は希望をもたらす

本書のテーマは「騙し」です。マジックもよい意味での騙しなので、マリック氏との対談も収められているのでしょう。マリック氏の無名時代の体験談なども、マジックの道具を売る際の営業的なことが述べられており、興味深く読むことができます。

本書は経済学的なことについても触れられています。貨幣、有価証券やサブプライム問題についても述べられていますが、それらは信用というものがもとになっているので、騙しとも関係が深いからです。

さらに本書が取り扱っている問題は幅広く、裁判や脳科学なども騙しと関連づけて考察されています。

騙しというものが存在するのは、人間の認知機能が不完全だからです。騙されないように気を付けることはできますが、完全になくしてしまうことはできません。

また、多くの人がマジックを楽しむことからもわかるように、人間は必ずしも騙されることが嫌いなわけではありません。むしろ騙されることを喜ぶことすらあります。

また、人間は本当のこと、特に自分については真実を知りたくないことがあり、ほとんどの人は無意識に自分を騙し続けている面があります。自分自身を直視することは非常につらいことであるため、騙しは自分の「正気」を保つために必須とすら言えるかもしれません。

おそらく、騙しとは単に否定するべきものではなく、本来人間に必要な物としてコントロールしながらうまく付き合うべきものであると考えられます。騙しについて重要なのは、騙すか騙さないかではなく、騙しによって利益がもたらされるかどうかでしょう。

騙しについての考察が難しくかつ面白いのは、人間の本質がどのようなものであるかがはっきりしないということもあるでしょう。人間の本質は、逆に騙しというものの洞察から得られるかもしれません。

本書でとくに面白かったのは、著者やマリック氏が超能力についてある程度肯定的に考えていることです。騙しについて書かれている本、とくに超能力などの超常現象について触れられている本の多くは、人間の騙されやすさを通じてそのような現象を否定するために書かれている本が多いからです。

マリック氏がマジックのトリックを知り尽くしているからこそ、逆に超能力がトリックであるかどうかを判別できるという発想が新鮮でした。

世の中は騙しに満ちています。騙す方が意図しているものはまだよいのですが、騙す方が意図していない騙しも多く、意図されていないだけにそれを意識するのは容易ではありません。

本書はマリック氏のエピソードなど読んでいて面白く、楽しみながら騙しについて理解を深めることができる本であると思います。



investmentbooks at 23:45│Comments(0)TrackBack(0)clip!本--その他 

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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