2009年09月16日
『これから10年 外国為替はこう動く』
国際通貨研究所/竹中 正治編著
2009年9月29日発行 1365円(税込)
これから10年 外国為替はこう動く
著者:国際通貨研究所
販売元:PHP研究所
発売日:2009-09-12
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本書の編著をしていている国際通貨研究所とは、旧東京銀行により設立されたシンクタンクだそうです。本書はその研究所に関係する5名の方々による共著です。
主著者の竹中正治氏の著書は、過去にブログで2冊か紹介させてもらったことがありますが、いずれも為替や資産運用について書かれている良書だった記憶があります。本書の目次は以下の通りです。
- 外国為替の長期法則が予想していた円高への揺れ戻し
- 「米ドルが凋落する」というのは本当か?
- ユーロはドルに代わる基軸通貨に台頭するのか?
- 高金利通貨相場は回復するか?
- 中国の台頭と人民元の将来
- オイルマネーは「ドル離れ」をおこすのか?
本書は外国為替相場のサイクル的な歴史の流れを主に解説している総論的な部分と、ドル、ユーロ、人民元などの代表的な通貨をそれぞれ説明している各論的な部分とからなりますが、本書の読みどころは総論的な部分です。
そのポイントは、外為市場の歴史においては、高金利通貨投資ブームとその崩壊が周期的に生じてきたということです。今回も、数年前の高金利通貨への投資ブームとその崩壊がありました。
そのように考えると、今回の金融危機も、外為市場の歴史からすると昔と同じパターンの繰り返しなのかもしれません。
ただし、歴史は繰り返しますが、将来も同じように繰り返すという保証はないので、時間が経ってみないと確かなところはわからないところはあります。
もしも歴史が今回も繰り返すとするならば、高金利通貨が暴落している現在は、高金利通貨に投資する好機と考えられます。ただし、現在が底かどうかはまだわかりません。
しかしながら、数年前のブーム時よりはよい時期であることは可能性が高いはずです。以上のことを理解するだけでも、本書を読む価値はあると思います。
本書では、ドル、ユーロ、人民元、オイルダラー各々についての解説や予測がありますが、それらを読むと通貨は世界経済の大きな流れと密接に関係していることがわかります。
一応予測も書かれていますが、おそらく書かれている方も当たると思って書かれているわけではなく、一つの可能性として書かれているようです。たとえば、人民元は長期的に上昇しそうですが、必ずそうなるとは言えません。
予測が当たらないとしても、通貨を通じていろいろと世界経済の今後について考えることは面白いと思います。予測が当たったら当たったで嬉しいですし、はずれたらはずれたで当たらなかった理由を考えるのが興味深いと思います。
ポジションを持っていれば特にそうですが、これは株式投資についても同様です。将来を予測し、自分の予測と実際ののズレを照らし合わせてそのズレの原因を考察し、そしてまた将来を予測するというのは、まさに人間の生きる行為そのものであると言えるかもしれません。