2009年09月28日
『マネー資本主義―暴走から崩壊への真相』
NHK取材班著 2009年9月25日発行 1260円(税込)
マネー資本主義―暴走から崩壊への真相 (NHKスペシャル)
著者:NHK取材班
販売元:日本放送出版協会
発売日:2009-09
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しばらく前にシリーズで放映されていた同名のNHKスペシャルが書籍化されたものです。10年くらい前にも『マネー革命』のシリーズがありました。数年前に文庫化されときに本ブログで紹介した記憶があります。
今回は10年前に比べると分量的には少ないようです。金融工学の本質的な部分は、10年前からほとんど進歩していないこともあるのかもしれません。本書の各章は、実際に放映された内容とほぼ対応しているようです。
- 投資銀行 〜暴走はなぜ止められなかったのか〜
- 超金余り 〜カリスマ指導者たちの誤算〜
- 年金マネー 〜「安全第一」からヘッジファンドと手を組むまで〜
- 金融工学 〜ウォール街の”モンスター”〜
本書の読みどころは、今回の金融危機に関連している各分野の著名人やキーパーソンに、実際のインタビューしていることです。やはりNHKは、”National television” なので、取材もしやすいのでしょう。
それでも、今回の金融危機についてのインタビューは、まだ日が浅かったり、守秘義務があったりなどして、断られたことも多かったようです。
本書の内容は、テレビで放映するためか、ややストーリーをわかりやすくし過ぎているきらいがあるかもしれません。そのような点においては、本書はNHK取材班による一つの解釈、あるいはストーリーとして読んだ方がよいかもしれません。
おそらく本書に登場できなかった、あるいは本書では語ることができなかった部分に、より問題の本質に近い部分や興味深い部分が隠されているはずですが、公共性の強いテレビ番組という枠内では限界があるのでしょう。
そのような点に注意して読めば、本書は一般的にも興味を持ちやすい部分に焦点が当てられている部分も多く、読み物として面白いと思います。実際の番組を見て本書を読んでもよいですし、本書を読んで番組を見ても理解が深まるはずです。
実際の放映は終わりましたが、調べてみると来月10月の8日木曜日(7日深夜)から4週にわたって再放送があるようです。
今回でもテーマになっている金融工学は、最初に書いた10年前の企画でも採り挙げられていました。今回はスポット的なので、金融工学についての解説自体は10年前の方が充実していると思います。
このようなテレビ番組や本が出ると、何となく金融危機は終了してしまったかのように思ってしまいますが、まだその影響はまだまだ残っていますし、事後処理はまだ終わっていないはずです。
できれば今後の見通しなども番組や本で採りあげてもらいたかったと思いますが、やはり予想的な内容は番組の構成として、とくにNHKの場合は難しい点があるのでしょう。