2009年10月06日

この記事をクリップ! Yahoo!ブックマークに登録 このエントリーを含むはてなブックマーク

『未来のための江戸学』4

田中 優子著  2009年10月6日発行  777円(税込)

未来のための江戸学 (小学館101新書 52)
著者:田中 優子
販売元:小学館
発売日:2009-10-01
クチコミを見る

 

同じ小学館101新書の新刊ですが、先日紹介した『目立つ力』には書影があるのに、残念ながら本書にはありません。著者は江戸文化の研究者で、江戸について数多くの著作がある方です。タイトルからは一見経済とあまり関係がなさそうに思えるのですが、実際は経済関係のことがいくらか出てきます。

江戸時代についてはしばらく前から研究が進み、本も数多く出ています。本書は江戸時代を考え直すことによって、今後の日本の未来について参考になる点があるかもしれません。本書の目次は以下の通りです。



  1. 未来につなぐべきことは何か
  2. 江戸社会と現代社会はどこが違うのか
  3. 江戸時代はなぜできたのか
  4. 江戸の生活と今の生活はどこが違うのか
  5. 江戸時代はなぜ終わったのか

現代の日本において江戸時代が語られることが多いのは、現在の状況が江戸時代と似ている部分があるからかもしれません。

江戸時代は、国内での戦争や海外への出兵の時期が長く続いたあとの平和な時代です。現代の日本も、明治時代から太平洋戦争が終わるまでの長い戦争がよく行われた時代のあとの平和な時代です。

本書で興味深いのは、江戸時代が始まった理由と終わった理由を世界全体の流れから捉えているところです。日本はもともと銀などの鉱物資源を輸出していた資源国だったようですが、アメリカ大陸で銀が産出されるようになって銀の価値が下がってしまったことが日本の経済状況に大きな影響を与えたことなどは興味深く読めました。

それ以外の部分でも、日本は世界の影響を受けており、本書の言葉で述べるとグローバリズムは昔から存在していたことが分かります。現在と大きく異なるのは、時間のスケールかもしれません。

江戸時代は女性性の強い時代であったようで、世界的に女性化が進行している現代社会においては、その意味においても参考になる部分があるかもしれません。

共通して参考になる部分はありますが、もちろん状況は大きく変化している部分もあり、そのまま当てはまるわけではありません。

著者の記述には、江戸時代に対する郷愁的な思いが感じられる部分もあります。江戸時代と比べると、現代の生産性は劇的に向上しはるかに豊かになっているはずですが、昔の日本人についての描写を読むと、現代の方が必ずしも幸福感が増しているとは言い切れない部分もあるようです。

だからといって江戸時代の生活に戻るわけにもいきませんし、江戸時代は江戸時代で数多くの問題もあったことでしょう。平均寿命は短かったでしょうし、乳幼児死亡率も高かったはずです。

ただし人類の長い歴史を考えると、ヒトは不足型の環境で最も幸福感を得られやすいようになっているはずです。江戸時代は不足の状態と満たされている度合いのバランスがよかったのかもしれません。

十分にものがありながらも幸福感を感じられるような、ある意味人間の本性に反した状態でどのように生活するかは、今後地球上の生産性が上がるについて問題になってくることでしょう。



investmentbooks at 23:54│Comments(0)TrackBack(0)clip!本--その他 

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
プロフィール
bestbook
家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
このブログについて
2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
ブックマークに登録
このブログをソーシャルブックマークに登録
このブログのはてなブックマーク数
アマゾン検索
月別アーカイブ
QRコード
QRコード
あわせて読みたい
あわせて読みたいブログパーツ