2009年10月10日
『社会主義化するアメリカ―米中「G2」時代の幕開け』
春山 昇華著 2009年10月24日発行 680円(税込)
社会主義化するアメリカ―米中「G2」時代の幕開け (宝島社新書 300)
著者:春山 昇華
販売元:宝島社
発売日:2009-10-10
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アマゾンの書影はまだないようです。著者は投資関連の仕事を長年なさっている方です。著者の本では、約2年前に出された本で、本ブログでも紹介した『サブプライム問題とは何か』というベストセラーがあります。この2年は世界の金融において激動の期間でしたが、あれから2年近く経つとは早いものです。
著者は『おかねのこねた』というブログも書かれています。その世界経済についての定点観測的な記事は、独自の視点と分析から書かれており、世界経済の流れを理解する上で非常に有益です。本書の目次は以下の通りになります。
- オバマの出現
- 金融危機は繰り返す
- アメリカ流資本主義とは何だったのか
- 社会主義に梶を切ったアメリカ
- 米中融合---G2時代の幕開け
- グローバル化がもたらしたもの
- 先進国日本が進むべき道
本書は200ページほどの著作ですが、もともと700ページあった原稿のエッセンスを「蒸留」したものであるとあとがきで書かれています。
タイトルに「社会主義化するアメリカ」とありますが、本書の本文では「資本主義化する中国」についての記述が豊富で、対になっているタイトルであればより正確に本の内容が表現されていたかもしれません。
本書は世界経済についての本ですが、「G2」とあるように、今後の世界経済はアメリカと中国が中心になるという予測です。本書のテーマは世界経済ですが、より広く世界について書かれているとも言えると思います。
本書でも、そして日々更新されている著者のブログにおいても、著者は中国経済について非常に強気です。これは、短期的にもそうですし、長期的にも中国は発展し続けるとされています。実際の投資のポジションもそのようにされているようです。
日本については最後にオマケ的に少しだけ記述がありますが、その分量が著者の頭の中における世界経済に対する日本経済の割合を示しているのかもしれません。ただし、日本を含めた「G3」の可能性についても言及はされています。民主党政権についてもさらりと書かれていますが、そのあたりも参考になると思います。
著者は、アメリカのオバマ大統領と中国の胡錦涛主席をかなり評価されているようで、著者が短期的に中国に強気な理由の一つに、その高評価があるようです。適切に内需拡大にシフトする経済政策を時流に乗って推し進めていると書かれています。
本書では世界経済についてだけでなく、貨幣制度による信用創造、市場とバブルのメカニズム、資本主義などの概論的なことについても簡明で本質的な解説があります。
著者が書かれていることには、その根底に投資家としての視点があると思います。著者の予測が当たる当たらないは別にしても、著者のものの見方は非常に参考になります。投資をする方であれば、本書は目を通しておいても損はしないのではないでしょうか。