2009年10月14日
『市場は間違える、だからチャンスがある』
阿部 修平著 2009年10月14日発行 1680円(税込)
市場は間違える、だからチャンスがある
著者:阿部 修平
販売元:日本経済新聞出版社
発売日:2009-10-15
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著者は日本株の運用を主に行う独立系の資産運用会社を設立し、長年経営されている方です。タイトルからはアクティブ運用の雰囲気が漂っています。
著者は過去に数年間ソロスの下で資産運用業務をされていたことがあり、本書ではその時のことについての経験も書かれており、読みどころの一つになっていると思います。本書の目次は以下の通りです。
- 投資家への道のり
- ソロスの再帰理論とブーム&バスト
- ブーム・バブルは繰り返す
- 私の投資理論
- 日本と世界の市場を読む
- 投資家はいかに行動するべきか
投資家としてのキャリア、ソロスの理論を参考にしたバブルのメカニズム、ここ数十年のバブルの歴史、著者の投資理論、今後の世界市場の予測などが述べられています。
本書はどちらかというと紹介的な内容です。著者が日本株の運用をメインにされているので、やはり今後の日本株に強気な理由が書かれています。
日本株に対して強気な理由としては、金融危機後の世界的な金融緩和、中国を中心としたアジアの発展による恩恵、世界的な代替エネルギーの需要による日本の環境技術の重要性などです。
シナリオとしてはあまり意外性はなく、このまま順調に世界経済が回復の軌道に乗れば、蓋然性の高い話です。
著者の予測通りになるかどうかは時間が経たないとわかりませんが、重要なのはある程度の資金を預かって資産運用されている方がそのように考えていることです。
代替エネルギーに関連する銘柄が今後上昇するかどうかは何とも言えないところですが、機関投資家の予想が市場の流れを形成し、その形成された流れによってトレンドが生じるきっかけになるということはあるかもしれません。昨日のニュースでは、本書で述べられているソロスも代替エネルギーに投資すると報道されていました。
投資理論については、ベンジャミン・グレアム、フィリップ・フィッシャー、ウォーレン・バフェットなどの考え方を敷衍して、穏当に書かれている印象を受けました。
著者の会社が運用する資産も、今回の金融危機で評価額は下がったでしょうし、さらに資金が一部引き揚げられたということもあったはずであり、本書では苦渋の決断を経て会社を建て直す話も出てきます。
本書をこのタイミングで出版されたということは、著者は現在日本株に投資するのは悪くない時期であると思われているのかもしれません。本書は日本株を運用する機関投資家が、現在の状況をどのように考えているかを知る上で参考になる点があると思います。