2009年10月15日

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『成功は一日で捨て去れ』4

柳井 正著  2009年10月15日発行  1470円(税込)

成功は一日で捨て去れ成功は一日で捨て去れ
著者:柳井 正
販売元:新潮社
発売日:2009-10-15
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著者はファースト・リテイリングの会長兼社長です。ファースト・リテイリングと言うよりユニクロといった方がわかりやすいと思います。

ユニクロの経営についての著者の本は過去に文庫でも読めるようになっている『一勝九敗』があります。そちらは創業から約6年くらい前までのことが書かれています。本書は著者がいったん社長を辞めて会長になり、その後再び社長となって経営の第一線に復帰されてからのことや、今後のグローバルな事業展開の目標について熱く語られています。



世界的な不景気のまっただ中、業績を上げ続けているユニクロは最近「一人勝ち」の言葉を冠して語れらることが多くなっています。銀座に大型店を出店するなどブランド力もアップし、グローバルな展開もよく報道されています。

昔は男性がユニクロの服を着てデートに行くことはあまり女性受けがよくなかったかもしれませんが、現在はユニクロの女性受けもよくなってきているかもしれません。

もしもユニクロを身につけて受けがよくないようであれば、相手の女性はその男性の内面にそれほど魅力を感じていないか、自分が付き合う男性の服装にふつう以上のこだわりがあるかのいずれかでしょう。

本書はタイトルから想像がつくように、著者が経営においては常にチャレンジ、反省、改善が必要であるということを、現在進行形のユニクロの経営を通じて語っている本です。

本書では失敗から学ぶことの重要性が多く語られており、成功した企業の経営者の本にありがちな成功話を羅列している本とは異なります。実際の失敗の体験も多く記述されており、参考になると思います。

本書のような本を読むと、やはりその会社の財務や株価が気になるので、大ざっぱにですが少し調べてみました。

最近出た2009年度8月期の決算では、売り上げが7000億円弱、経常利益が1000億円程度です。総資産が5000億円弱、利益剰余金がなんと3000億円程度積み上がっています。自己資本比率が56%であり、ROEが20%近くあります。収益性は抜群です。現金及び現金同等物が1700億円程度あり、キャッシュも潤沢です。

今日の終値の株価で計算して、時価総額は1兆5000億円強、PERは約30倍、PBRは6倍弱です。

成長性やブランド力があるにしても、株価のバリュエーションの指標は企業規模からするとやや高い感じがします。ユニクロというブランドが有名なことや、最新の決算以降も業績のよさが連日のように報道されていることもあるのでしょう。

本書では2020年の目標が述べられていますが、売り上げ5兆円、経常利益1兆円です。

経常利益が1兆円になるとすると、税引き後の純利益はだいたい6000億円になります。それくらいの規模になると、おそらくPERはせいぜい15倍程度でしょう。そうすると時価総額は9兆円程度になっているはずです。

現在の時価総額が1兆5000億円なので、目標が順調に達成できたとすると、株価は現在の6倍くらいになることになります。11年後に6倍と考えると悪くはありません。

ちなみに時価総額が6倍の9兆円になったとすると、発行総株式数の1/4強を保有する著者の持ち株の時価総額は2兆3000億円程度となり、世界の大富豪ランキングベストテンに入るくらいの規模になるはずです。

ただし、これはすべてが順調にいったときの話です。売り上げの目標は5兆円ですが、この目標額は同じ業界における現在の世界ナンバーワンの会社の倍以上です。また、株式については、M&Aによる規模の拡大も本書に書かれているので、株式交換のために新株を発行して希薄化する可能性もあります。

本書を読んで最も気になったのは、ユニクロという会社における著者の役割と存在感が大きすぎることです。5年程度で著者に匹敵するような後継者が見つかるか、あるいはカリスマ的な経営者がいなくても成長を続けることができるような体質に変わる必要があると思います。

ユニクロは将来性があると思いますが、現在の株価はやや高いと思うので、自分だったら買わないかもしれません。株価が現在の半分くらいになれば考慮すると思います。ただし、長期的に成長する株は高い高いとずっと言われながら株価が上昇するので、買わない方がよいとも言い切れません。

株式投資の話はおいておくと、ユニクロのグローバルな展開は日本にとって大きな意味があると思います。日本はハイテク、日本食、アニメやマンガなどで知られていますが、しゃれたイメージはあまりないはずです。

もしもユニクロブランドがよいイメージで受け入れられれば、世界の日本に対するイメージに大きな変化を与えることでしょう。とくに、身につけるものは身体性のある親近感をもたらすに違いありません。

よって、株式投資の面では、やや割高と思われる現在の株価のためあまり期待していませんが、日本の代表として世界に広がるユニクロという企業については、いろいろな意味で多くを期待しています。本書を読んで、ますますその期待がふくらみました。



investmentbooks at 23:56│Comments(6)TrackBack(0)clip!本--経営者 

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この記事へのコメント

1. Posted by のぞみ   2009年10月16日 02:19
5 blog主さんに勝手なリクエストなんですが、
たまに気に入った映画の評論もしてほしいです。
今巷で、「空気人形」という邦画が裏ヒットしていますが(R-15指定なのに女性に人気)、
心理学的や死生観的にけっこう深い映画だと思います。こういう素晴らしい映画のblog主さんの批評も拝見したいです♪
2. Posted by R+ (レビュープラス)   2009年10月16日 17:56
はじめまして。弊社は株式会社ニューノーマルと申します。

現在弊社では、「R+(レビュープラス)」という、普段から書籍や雑誌などのレビューを書いていらっしゃる活発なブロガーの皆様と、企業とを結びつけるレビュー専門ブログネットワークを運営しております。

本日はブログを拝見させて頂き、ぜひ精神科医が読み解く、ビジネス・投資・自己成長のヒントになる本様にもレビュープラスにご参加していただきたくご連絡させて頂きました。

サービスの内容といたしましては、出版社が提供する書籍や雑誌をブロガー様に配布しご自身のブログにてそのレビューを執筆して頂く、という流れです。
ブロガー様には、無料にて献本させて頂きます。

詳細はこちらより、ご覧くださいませ。
http://reviewplus.jp/service

これまで「ニューズウィーク 日本版」「週刊ダイヤモンド」「MacPeople」
「クーリエ・ジャポン」等を実施しており、クーリエに関しましては、講談社編集部によるレビューブロガーコンテストも同時に開催させて頂いております。
http://c.reviewplus.jp/

ご興味をお持ち頂ければ、ご登録いただければ幸いです。
ご質問等ございましたら、何なりとお問い合わせくださいませ。

突然のご連絡にもかかわらず、長文大変失礼いたしました。

失礼いたします。
3. Posted by レバレッジ君   2009年10月17日 10:48
阿部修平氏の本といい、私が読みそうな本を、それも発売すぐに読まれていて、いつもびっくりしています。

確かに株価的には、だいぶ上がってきましたので、コメントは避けますが、当社の将来性はまだまだこれからだと思います。

ユニクロファンより。
4. Posted by bestbook   2009年10月17日 13:11
>のぞみさん

リクエストいただきありがとうございます。また、映画の情報もありがとうございます。ネットで調べてみましたが、面白そうな映画ですね。

今のところ映画の公開期間が限られているので実際に見るのは難しそうですが、DVDなどで見る機会があれば覚えておこうと思います。


>ニューノーマルさま

御提案いただきありがとうございます。当ブログは現在のところ献本をいただかない方針で行っております。

今後方針が変わるようでしたら、参加させていただくこともあるかもしれませんので、その際はよろしくお願い致します。


>レバレッジ君さん

コメントありがとうございます。お互い本の興味が似ているのかもしれませんね。

グローバルな展開におけるユニクロの成長性は上限が見えません。著者は売り上げ5兆円とされていますが、途上国と世界経済の発展によっては、数十年後はまだまだ伸びている可能性すらあるのではないかと思います。

現在の株価では買いにくいのですが、長期的に発展するのであれば、また買い場もやってくることでしょう。ユニクロには期待しています。
5. Posted by のぞみ   2009年10月17日 21:16
5 ブログ主さんはビジネス書を中心にいつも紹介されていて、
でもたまに、魂っぽいていうか死生観的な内容の本も紹介されますよね?
だから精神医学の専門の方なのに面白いな〜と思って拝見してました。
是枝監督はたぶん映画を撮る時のテーマの根底に、いつも「死と生」のようなものを感じるんです。
この最新作の「空気人形」はダッチワイフを彼女にする都会のさえない孤独な中年男性の話なのに
連日若い女性の観客で満席なんです。
たぶんブログ主さんだったら観劇中、15回ほど号泣されると予測できますね(笑)
是枝監督の前作「歩いても歩いても」はDVD化されてますが、
こちらはお医者さんの家族の話で、感動しますよ〜
もしTSUTAYAなんかで借りるDVDに迷ったらオススメです〜♪
6. Posted by bestbook   2009年10月18日 01:31
のぞみさん、コメントありがとうございます。

スピリチュアル関係の本は恋愛の本と同様に、ビジネス書のスパイスとしてたまに紹介しています。面白く思っていただけると幸いです。それらの本はスパイス的に採りあげているのですが、経済や投資関係の本より反響が大きかったりします。

ご紹介いただいた映画はかなりのインパクトをもたらすようですね。女性に受けるものは、そのうち男性の間でも話題になることが多いと思います。

評判になれば上映期間も延びるでしょうから、映画館で見る機会もできるかもしれません。DVDのオススメもありがとうございます。

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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