2009年10月26日
『脱線FRB』
ジョン・B・テイラー著 村井 章子訳
2009年10月26日発行 1890円(税込)
脱線FRB
著者:ジョン・B・テイラー
販売元:日経BP社
発売日:2009-10-22
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著者は世界的に著名な経済学者で、金融政策運営の指針となるテイラー・ルールを提唱されている方です。テイラー・ルール自体は昔からありましたが、本書では今回の金融危機の原因をテイラー・ルールからのズレで説明しています。
本書は、金融政策について専門的な内容ですが、図が多用されており、論旨が明快です。また竹森俊平氏の解説も付いています。その建設的な批判によって全体のバランスがよく取れていると思います。本書の目次は以下の通りです。
- 金融危機はなぜ発生したのか
- 金融危機はなぜ長引いたのか
- 金融危機はなぜ発生後一年も経ってから悪化したのか
- 金融危機の二十年間に機能したのはどのような政策か
- ブラック・スワンはなぜ2007年8月に降り立ったのか
テイラー・ルールによる中央銀行が取るべき政策金利は、以下のシンプルな式で表されます。
政策金利=中立名目金利+α(実勢インフレ率−目標インフレ率)+β(GDPギャップ)
本書の骨子となる主張は、金融危機の原因となったアメリカの不動産バブルが、FRBのテイラー・ルールから逸脱した利下げにより過度に金融が緩和されたからということです。
本書ではグリーンスパン前議長の反論も載せられていますが、その反論に対する著者の反論もあります。
本書の主張はクリアカットであり、図も明快で説得力がありますが、説明がきれいすぎて逆に経済現象がこれほどクリアに理解できるものなのかという疑問もあります。
グリーンスパン前議長は金融政策の現場の最前線にいただけに、あまりにもわかりやすい後付け的な議論に反論するのは当然かもしれません。
読みながら思ったのですが、実は本書はところどころに著者の主張の「正しさ」を読者に印象づけるさまざまな工夫がなされているように思いました。学説を広めるためには、学説のマーケティングも必要なようです。
具体的に一つ一つ述べるとあまりにもうがった感じになってしまうので、実際に読む機会があれば意識してもらうと、いくつか思い当たるような部分もあるかもしれません。自分の考えを世に広めたい場合に、どのようにすればよいか参考になるところも多いと思います。
テイラー・ルールは過去の分析に基づいてつくられています。本書では予測的な妥当性もあったとも書かれていますが、そのことが将来の妥当性を保証するかどうかまではわかりません。
金融危機はそれまでの常識を覆すような形で生じることが多いので、あまりにも明快な理論を信頼しすぎるのは将来のトラブルの元ですが、議論のベースとして簡明なルールがあるのは有用であるとも思います。
テイラー・ルールの式で注目すべきは、「目標インフレ率」があることです。竹森俊平氏の解説で書かれていますが、インフレ目標の前提から議論する必要もあると思います。
経済学の理論は、理論を過度に信頼しすぎず、議論のたたき台にするのであれば現実の経済の分析に役立つと思います。本書を読むと、たたき台としての理論の重要性がわかります。








