2009年11月13日

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『跡無き工夫 削ぎ落とした生き方』4

細川 護煕著  2009年11月10日発行  760円(税込)

跡無き工夫  削ぎ落とした生き方 (角川oneテーマ21)跡無き工夫 削ぎ落とした生き方 (角川oneテーマ21)
著者:細川 護煕
販売元:角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2009-11-10
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著者は総理大臣をなさっていた方で、政界を引退後は湯河原に庵を結んで脱俗的な生活を過ごされています。本書は著者の具体的な生活の様子や人生観が、古文や漢詩などを引用しながら語られています。

本書は欲望を超越した世界を意識しながら日々過ごされている方が書かれているので、本ブログでいつも紹介している本とはある意味対極的な内容になります。本書の目次は以下の通りです。



  1. 庵を結んで人境に在り
  2. 欲無ければ一切足る
  3. 道は糞小便の中にある
  4. ひとり遊びぞ我はまされる
  5. 枕頭の書

各章のタイトルにも本書の雰囲気がよく出ています。著者は総理大臣までされた方ですが、俗世間で生活されながらも、若い頃からもともと脱俗的な性向をお持ちだったことが本書からわかります。

著者が現在の心境に至ったのは、俗的な欲求を満たしたからこそであり、政界での経験がなければ本書ほどの境地に至ることはなかったでしょう。

そのように考えると、欲望から解放された脱俗的な状態を目指すのであれば、逆に俗世間で自分がやりたいことを思い切りやった方がよいと思います。しかしながら、このあたりの考え方は人によって異なるかもしれません。

本書では世俗にとらわれない人生を送った過去の人々の様子についても、ところどころで語られています。そのようなエピソードを読んで、真似できないと思いながらもどこかで少しは憧れを持つことができるような方であれば、本書は興味を持って読めることでしょう。

終わりの方に著者の読書体験や著者に選ばれた本も挙げられていますが、やはり本ブログで紹介しているような本とは趣向が異なった本ばかりです。

庵を結ぶということに対する憧れはあまり一般的ではないかもしれませんが、自分だけでひとりになれる書斎を持ちたいと思っている男性は少なくないと思います。両者は本質的に通じ合っている部分があるかもしれません。

著者の周囲には人の気配が無いことが行間から伝わってきます。本書から感じられるのは著者の精神だけです。このあたりを寂しいと感じるか、あるいは純粋さを感じるかで、本書に描かれている生活に対する評価は異なることでしょう。

おそらく多くの人にとって、世俗的か脱俗的かは二者択一ではなく、両者が混じり合っている状態が多いと思います。

両者は方向性としては正反対なのですが、一方をとことん追求すると実は逆の方向にも無意識的には追求されていることが多いように思います。

世俗での本当の意味での成功を追求すると脱俗的な傾向が生じますし、脱俗性を探求すると、おそらく世俗にふさわしい場が出てくるはずです。

本書は脱俗のベクトルの本なので、現時点において脱俗の方向を向いている方が読むと興味深く読めると思います。ただし、脱俗の中にも世俗があり、世俗の中にも脱俗があります。

世俗か脱俗かということは深く考えると表面的な問題に過ぎないので、いずれにしろその時々の自分としっくりくる方向に進むのがよいはずです。本当の脱俗とは、世俗か脱俗かということを超越していると思います。



investmentbooks at 23:59│Comments(2)TrackBack(0)clip!本--人生指南 

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この記事へのコメント

1. Posted by mhrl   2009年11月26日 16:06
5 政権担当も淡泊だったし、政界からもあっさり身を引きましたね。
知事辞める時にすでに引退の意向だった書いてあり、なるほどと思いました。
2. Posted by bestbook   2009年11月26日 23:19
mhrlさん、コメントありがとうございます。

たしかに在任中からそれとなく雰囲気は出ていたように思います。最近の日本の政治家には珍しいタイプの方と思います。

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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