2009年11月17日

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『愚者の黄金〜大暴走を生んだ金融技術』4

ジリアン・テット著  平尾 光司監訳  土方 奈美訳

2009年10月21日発行  2100円(税込)

愚者の黄金〜大暴走を生んだ金融技術愚者の黄金〜大暴走を生んだ金融技術
著者:ジリアン テット
販売元:日本経済新聞出版社
発売日:2009-10-22
おすすめ度:3.0
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本書はサブプライム問題を軸に、証券化商品やCDSなどのデリバティブの黎明期からその発展、そして今回のサブプライム問題による金融危機までの問題について、J・P・モルガンがいかにしてリスクを回避しようとしたかということに焦点を当てて書かれています。

本書は「ファイナンシャル・ブック・オブ・ジ・イヤー賞」を受賞した本だけあって、しっかり書かれていますが、それだけに読んでいて集中力が要求される面もありました。



今回の金融危機の原因となったサブプライム証券やCDSについての本は数多く出ており、現在となってはその仕組みなどについて本書からは新しい知識は得られないかもしれません。

本書の読みどころはそれらの知識にあるのではなく、今回のサブプライム問題においてJ・P・モルガン・チェースがどのようにリスクを回避したかという記述にあります。

今回の金融危機においてその原因の一部を作った投資銀行はすっかり「悪者」になってしまいましたが、投資銀行家の中にも「良識」を持った人がいたというのが本書の著者の一つの主張です。

その一方、本書ではデリバティブや証券化の発展の過程についてもリアルに描写されています。今となっては、それらもすっかり悪いイメージが連想されるようになってしまいましたが、開発された当時はまさにイノベーションとでもいえるような状態だったようです。

その雰囲気はほんの数年前まで残っていたようです。日本も追いつかないといけないといった論調で語られていたことも多かったように記憶しています。世の中の評価はすぐに変わり、いい加減なところもあると思います。

すっかり悪いイメージが染みついてしまったデリバティブですが、利用の仕方によっては、もちろんいまでも有用な面はあります。

デリバティブについての正当な評価は、持ち上げられるときにもその危険性を見極め、「悪者」になっているときもその有用性を理解することです。デリバティブを悪者とみなすのは、深く理解しないという点においては、数年前にそれらの危険性を省みなかったことと根は同じです。

不動産の証券化商品については、日本の金融機関は深く手を染めていなかったので今回の金融危機における被害は諸外国に比べると少なく、結果的にはよかったのですが、それらを活用せずに被害を受けなかったのはたまたま結果がよかっただけかもしれません。

今回の金融危機で学ぶべきは、デリバティブの危険性というよりも、深く考えずに物事を進めることの危険性です。それを学ばなければ、いくらデリバティブに対して注意をしたとしても、新たに別の形で問題が発生するだけであると思います。



investmentbooks at 23:52│Comments(4)TrackBack(0)clip!

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この記事へのコメント

1. Posted by Orwell   2009年11月20日 22:42
テット女史が、先の著書、セイビング・ザ・サンとにおいて、長銀救済後の外国勢力の日本に対するお説教をたれたことを詳細に期日していましたが、今回の愚者は完全に、欧米の勢力でした。危うく日本が破壊されるところでした。会社法、商法から、アメリカ型の経営手法は、失敗でした。日本型に戻るべきでしょう。
2. Posted by bestbook   2009年11月22日 23:10
Orwellさん、コメントありがとうございます。

『セイビング・ザ・サン』については、日本人が読むと立場によっては微妙な感じがする本であったと思います。

日本型の経営はいったん持ち上げられて、その後評価が下がりましたが、今でも学ぶべき点はあると思います。今後世界で再評価されるかどうかは、日本経済が立ち直れるかどうかによるかもしれません。
3. Posted by snowbees   2009年11月24日 18:45

ご紹介いただいた、テット女史の新作は楽しみで、早速、最寄の図書館の在庫分を予約しました。
なお、同氏の図書「セイビング....」も、面白く読みました。新会社の設立に、ボルカーや槙原・三菱商事元会長などジャパン・ハンドラーを勧誘したこと、租税回避のために、当初からオランダ法人にしたことなど、用意周到ですね。それに反して、日本側は「脇が甘すぎた」のでは?しかし、後日談として、それに続くディールでは、自動車部品メーカーの旭テックを買収したが、事業不振で、約1,000億円が塩漬け状態であると。
4. Posted by bestbook   2009年11月25日 01:12
snowbeesさん、コメントありがとうございます。
本書はしっかり書かれており、読みごたえのある本でした。「セイビング・ザ・サン」に書かれている事柄は、日本における評判は今一つでしたが、刺激になって日本経済を活性化した面もあると思います。
うまくやられてしまったことは印象に残りますが、そうでない部分はあまり報道されません。ファンドはやはりリスクを取る存在なので、塩漬けもよくあると思います。

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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