2009年11月26日

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『フリー〜〈無料〉からお金を生みだす新戦略』5

クリス・アンダーソン著  小林 弘人監修・解説

高橋 則明訳  2009年11月25日発行  1890円(税込)

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
著者:クリス・アンダーソン
販売元:日本放送出版協会
発売日:2009-11-21
おすすめ度:5.0
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ネット上のコンテンツや検索機能などの多くがフリー、つまりタダであることはすでに日常的な事柄としてほとんどの人が体験していますが、本書はインターネットを通じて世界に広まっているその現象を解説したものです。

著者は「ロングテール」の概念を世に広めた方らしいです。本書で解説されている「フリー」という現象の本質は、インターネットの発達により情報の伝達コストが限りなくゼロに近づいたということが根本にある点で、「ロングテール」と共通しています。



本書に書かれているようなことを10年くらい前に認識していれば、莫大なお金を手に入れることができたのでしょうが、本書のような形でまとめられるような時期となってはすでに昔ほどのうま味はなくなっているかもしれません。

本書に描かれていることは新しいことのように述べられていますが、考え方としては昔から存在しているのではないかと思います。ただし量的に極端な変化が質的な転換をもたらすというように考えると、新しいと言えるのかもしれません。

1億円を得る一つの方法は、日本人全員の一人一人から1円をもらうことです。実際にそのようなことができるとお釣りがでます。全員から1円ずつもらえなくても、10人に一人から10円ずつ、あるいは100人に一人から100円ずつもらってもよいでしょう。

一人一人にお願いして集めるのは集めるお金以上のコストがかかるので実際は困難ですが、ネットが発達した現在となってはそれに近いことが可能になっています。

人を集めてそのうちの一定の割合の人からお金をもらうというのは、別に新しいビジネスモデルではありません。無料イベントを主催して人を集めると、そのイベントの雰囲気を楽しむだけでお金を払わない人がいたとしても、一定の割合でお金を使う人がいるので、昔から多くの人を集めることはお金になっていました。

ネットの世界では、お金を使う人の割合が少なくなり、一人一人が使うお金が少なくなっていますが、集めるコストが非常に少なくなり、集まる人が非常に多くなっています。このような状況が、お金を使わない人にとって「フリー」な感じを抱かせるのでしょう。

本書ではこのような世界の現状とこれからを描いていますが、著作権の問題などについても触れられています。本書で書かれているように、情報の伝達と複製が容易になると、いままでの著作権は過剰に保護されすぎていることになります。

ビル・ゲイツが莫大な資産を築けたのは、ソフトウエアの広まりやすさの程度からしてその権利が過剰に保護されすぎていた過渡期に存在したからというように後の時代には解釈されるかもしれません。

過剰な保護は不自然なことなので何らかの形で破綻するのが自然ですが、本書で書かれているように、その一つの形が中国での海賊版の蔓延ということになるようです。

本書に描かれていることは現在も進行中です。たとえば、出版物のコンテンツをネット上で公開するかどうかということは、先日もニュースになっていたように今後数年のテーマになるはずです。落としどころはわかりませんが、しばらく時間が経てば落ち着くところに落ち着くことでしょう。

時代が大きく変化しているときにおいても、日常性に埋没して歴史的な変化を感じ取れないことは普通だと思いますが、数百年後から振り返ると、やはりこの数十年は地球の歴史において大きく変化した時期であったということになるのではないでしょうか。



investmentbooks at 23:16│Comments(0)TrackBack(0)clip!本--マーケティング 

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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