2009年12月10日
『きっちりコツコツ株で稼ぐ 中期投資のすすめ』
鈴木 一之著 2009年12月4日発行 1680円(税込)
きっちりコツコツ株で稼ぐ 中期投資のすすめ
著者:鈴木 一之
販売元:日本経済新聞出版社
発売日:2009-12-05
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最近は市場が低迷しているため、一般向けに書かれた株式投資本の新刊は少ないのですが、本書はその数少ないうちの一冊です。本書はタイトルに中期投資とありますが、景気の波により上下する傾向のある市況関連株に対する投資についての本です。
著者は過去にも同じテーマで本を書かれていますが、本書の方がより内容が充実していると思います。本書の目次は以下の通りです。
- 投資ストレスでお疲れのあなたに
- 投資で大損しないための心得
- 何を、いつ買い、いつ売るか
- 中期投資を成功させるポイント
- 成功を呼ぶ「投資手帳」
本書はいろいろな点で明確に数字が書かれている本です。たとえば以下のような数字が挙げられています。
- 目標金額は3000万円
- 投資期間は最大3ヶ月
- 目標リターンは原則プラス20%
- ロスカットはマイナス15%
一般の人の株式投資に対する適切な数字は、一つの例として以上のようになるかもしれません。投資期間が短すぎると日々の生活が落ち着かなくなり、長くなると待ちきれなくなりがちです。
また、投資銘柄についても明確に限定されており、本書で対象となっているのは日経225のうちの市況の変化に応じて循環するシクリカル銘柄です。細かい点は本書で詳しく解説されていますが、非常に単純化すると景気がよいときに株価が上がり、景気が悪くなると株価が循環的に下がるような銘柄です。
本書の投資手法の本質はトレンドフォローです。そのため、いかにして株価上昇のトレンドに乗るかが重視されており、「投資尺度は用いない」「分散投資はしない」などと、一般の投資本とは異なっている主張も見られます。
なぜそのようにするかについての理解を通じて、株式市場に対する洞察を深めることができると思います。
また、本書では投資心理についての記述がわかりやすく書かれており充実していると思います。その心理面での描写については、数年間投資をして上げ相場と下げ相場の両方を経験している方であれば、実感を持ってうなずける点も多いと思います。
本書が今の時期に出されたのは、現在の状況が「中期投資」の開始時期として適切である可能性があるかもしれないということはあると思います。もちろん現在が長期的な下落トレンドにおける一時的な上昇期である可能性もありますが、その場合には本書に書かれているように、ロスカットの必要が生じます。
本書の手法は、いろいろな面で「人としての分をわきまえた」投資法であると思います。適切な期間設定、適切な目標金額、適切な期待リターン、適切な損切りラインなどがあり、そして日々の生活において適切な時間と手間を配分するようになっています。
そのような意味において、本書は株式投資に興味がありある程度アクティブに株式投資に関わりたい方にすすめられるのではないかと思います。
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この記事へのコメント
鈴木氏はネットセミナーやストックボイス等でお見かけしますが、いいところはシクニカル(景気循環)株一本でぶれないこと、謙虚なものいいでしょうか。
シクニカル株は景気が天井打つ前に下がり始めるとのことで、売買しなくとも、経済を占う 上で注目すべきものと思っています。
はじめまして。コメントありがとうございます。最近は忙しいためブログの更新は週に四日になっています。本を買うことについてはいろいろと考え方がありますが、個人的には本はなるべく買うほうがよいと考えています。積読状態はこちらも同じです。本は場所を取るので置き場に困るのですが、それでも買ってしまいます。
今後ともよろしくお願いします。
>斎藤さん
記事がお役に立ってうれしく思います。鈴木氏は何回か講演でお話を聞いたことがあるのですが、ユーモアがあって話が面白い方ですね。
自分でシクリカル銘柄の投資を行わないにしても、シクリカル銘柄は経済や相場の動向を眺める上で参考になります。本書は景気を考える上でも役に立つ本です。