2009年12月16日
『逆境を生き抜く名経営者、先哲の箴言』
北尾 吉孝著 2009年12月30日発行 777円(税込)
逆境を生き抜く名経営者、先哲の箴言 (朝日新書)
著者:北尾 吉孝
販売元:朝日新聞出版
発売日:2009-12-11
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著者はSBIホールディングスのCEOをされている方です。過去にも古典を題材にした経営論についての本などを書かれていますが、新書は本書が初めてと思います。
SBIという会社はインターネット専門の金融業を中心に行っており、グローバルな展開も豊富で事業内容が興味深い会社です。そして、いろいろな意味で著者も経営者として興味深い方です。本書は大きく三つの部分に分かれています。
- 逆境を生き抜いてきた名経営者の知恵と胆力
- 歴史と先人の哲学が教える、危機への対処法
- 資本主義の危機に、一個人としてどう備えるか
本書は中国の古典や日本の著名な経営者の言葉を引用しつつ、著者とそれらの経営者との直接の関わりや経営哲学について述べられています。
経営者の方は古典の思想などを経営哲学のよりどころにしている方が多いのですが、これは経営トップは自分自身の行動の自由度が高いので、自分の規範となる何らかの拠り所が必要だからだと思います。
これは政治家なども同様かも知れません。不確実でハイリスクな環境を自分の判断で乗り切り、それによって多くの人に影響を与える状況では、完全に自分の判断を信頼できるほど自信のある方もいないでしょう。
著者はテレビなどで拝見する限りでは自信がある方のように見えるのですが、実際には古典の箴言によってバランスを取っておられるのかもしれません。
SBIと言えば著者の顔が思い浮かぶくらい著者は会社の存在と一体化していると思いますが、よい意味でもあるいはそれ以外の意味においても、著者はその本質的な部分を捉えきれない幅広さがあります。経営者としての評価も人によって異なると思います。
SBIという会社も面白い会社だと思うのですが、どことなく危うい感じもします。その危うい感じが現在の株価にも表れていると思いますが、大きく発展する会社はその初期の段階では危うさを感じさせることがあることを考えると、投資判断は難しいところです。
本書は著者の考えがよく表れていると思うのですが、やはり本書を読むよりもSBIという企業の実際の事業の発展を眺めている方が面白いと思います。本書はその発展を眺める上での参考になるかもしれません。