2009年12月30日

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『ウォーレン・バフェット 華麗なる流儀』4

ジャネット・タバコリ著  牧野 洋訳

2010年1月21日発行  2520円(税込)

ウォーレン・バフェット 華麗なる流儀―現代版「カサンドラ」の運命を変えた日
著者:ジャネット・タバコリ
販売元:東洋経済新報社
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アマゾンはまだ書影もありませんし、このエントリーを書いている時点では「この本は現在お取り扱いできません。」という状況になっています。リアルの書店で昨日入手したのですが、発売日の関係でまだアマゾンでは販売できないのでしょうか。

アマゾンで販売されるようになってから紹介するのがセオリーかもしれませんが、なるべく読み終えてすぐに紹介することにしているので、本日採りあげさせてもらいます。アマゾン以外のネットの書店では売っているところもあるようです。



本書の日本語のタイトルからはバフェットの人生や投資哲学について書かれている印象を受けますが、原著者は日本語版序文の最初でまず以下のように書かれています。

「本書はウォーレン・バフェットについての本でもなく、彼の人生についての本でもない。アメリカ史上最大の信用バブルがはじけようとしている時、わたしはバフェットからランチの招待を受け、バリュー(価値)に注目するようになった。あるいはバリューの欠如に注目するようになった。これが本書のテーマである。」

後半が抽象的でややわかりにくいのですが、本書はサブプライム問題に由来する世界的な金融危機を、バフェットの言葉や著者とのリアルタイムでのやりとりを織り交ぜつつ、デリバティブの専門家の立場から解説した書物であると考えてよいと思います。

著者は女性の方で、デリバティブについての専門書も何冊か書かれている方のようです。サブプライム問題については問題が顕在化するよりかなり前から警告を発しておられたようであり、本書にはその時期におけるバフェットとのやりとりが出てきます。

著者も一番最初にはっきり書かれていますが、本書のテーマがバフェットの投資哲学であると思って読み始めると、期待していたものと異なる感じがすると思います。

そのことを踏まえて本書を読むと、さすがに著者はデリバティブの専門家だけあり内容はしっかりしていると思います。ページ数も500ページ近くあり、読み応えもあります。

本書から受けるのは、真面目で頭もよい小学生の女の子の学級委員が、やんちゃな男の子の秩序を乱す振る舞いを正統的に批判してるイメージです。批判のすべてがツボを突いており正しいのですが、女の子は自分の正しさをさらに「正しく」するために個人的にも親しい権威ある先生の考えを引き合いにしています。

そのような意味において、本書に書かれているバフェットの考えは、バフェット自身のものというよりも、著者を通じて表現されているバフェットの考えになると思います。

もちろんバフェットについて書かれている本は、それぞれ著者のフィルターを通っているのですが、本書はとくにそのフィルターの色が強いと思います。しかしながら、そのことは本書が著者の金融危機についての考えを表現するための本であると考えると当然な面があります。

本書のタイトルはバフェットを前面に出していますが、もともとしっかり書かれている本だけに、むしろ著者の言いたいことを前面に出してバフェットは「脇役」的に登場してもらった方が、より「バリュー」が高くなっていたかもしれないとも思います。



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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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