2010年01月08日

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家業再生7

それまでも年に1〜2回は郷里に帰省していましたが、いつも実家に着くとまずしていたのは、祖母の遺影に手を合わせることでした。その時も家に着いてすぐに仏壇に線香をあげました。

目を閉じて祖母の遺影に手を合わせながら考えました。もしも祖母が今ここにいてこの現状を知ったら何を思うだろうか。



戦争で夫を亡くした祖母は、まだ幼い5人の子どもと年老いた義理の両親とともに取り残されました。戦後の混乱した時代状況のなかで、突然一人で家族を養う必要に迫られた祖母は、土地と家を売り払い田舎から戦争により灰燼となった街に出て旅館を始めました。

その頃女性だけで行うことのできる商売というと、おそらく旅館くらいしかなかったのでしょう。子どもを育てながらそれまで経験のなかったビジネスを女手一つで行うのは相当の苦労があったことが想像されます。

祖母は自らの生活を切り詰めながら、寸暇を惜んで数十年間働き続けました。5人の子どもを育て上げ、着実に事業を拡大し、数億円相当の土地、数千万円のお金、その他の資産を残しました。

父が母と結婚した後は、母が旅館を引き継ぎ祖母は引退しました。その後旅館の建物を壊し、その跡地にビジネスホテルを建てて、父が社長となったわけです。

晩年に自分の体が思い通りにならなくなってからは、祖母は自らの体の不自由さを嘆いてよく言っていたものでした。

「ああ、体が思うようにならなくなって自分が情けない。体さえ思い通りに動けば、いくらでも働くことができるのに。」

また幼い自分によくこうも言い聞かせていました。

「「為せば成る為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」という言葉があるけれど、人間はやろうと思ってできないことはない、できないのは自分でやらないだけだよ。よく覚えておきなさい。」

上杉鷹山の言葉ですが、強い意志を持って懸命に働くことにより資産を築いた自信がこのような言葉を孫に対して語らせたのでしょう。

またこのようにも言っていました。

「あの土地があればお金の心配をする必要はない。あなたは自分が好きなことをやりたいようにしなさい。」

このように言うときの祖母の笑顔からは、自分が成し遂げたことへの誇りと孫に対する愛情を感じることができました。

その帰省の時には祖母が亡くなって5年以上経っていましたが、おそらく祖母は最後までホテルの経営状態が芳しくないことを知らなかったはずです。父のすぐそばで働いていた母ですら何も知らなかったくらいなので、祖母が知るよしもありません。

もしも祖母がそこにいて自分が創業した家業の現状を知ったら、どのように思いどのようなことを言うだろうか、両手を合わせて目を閉じながら考え続けました。



investmentbooks at 23:53│Comments(2)TrackBack(0)clip!つぶやき--家業再生 

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この記事へのコメント

1. Posted by Y   2010年01月09日 23:27
すごいお婆様ですね。
戦後の何もないところから全力で生き、ひと財産を築かれた人は何かが違うというか。私の祖父もそういう人でした。仏壇に手を合わせるといつも「おじいちゃんありがとう」と思います。同時に普通に大学を出て院も行かせてもらってアンパイにサラリーマンをやっている自分がちょっと情けない気持ですが、時代も違うしなあ... がんばりましょうね 
 
また来まーす  Y
2. Posted by bestbook   2010年01月10日 00:40
Yさん、いつもコメントありがとうございます。

祖母などの世代の人のことを考えると、戦後の日本の驚異的な復興は、うちの祖母やYさんのおじいさまに限らずその世代の人達によって成し遂げられたことを感じます。ここではうちのことについて書いていますが、上の世代の人々が築いたものをいかにして発展させていくかは今後の日本全体の課題です。
何もないところから発展させるのはすごいことですが、今のような日本の状態から今後どのように社会を発展させていくかということにはまた別の難しさがあります。社会が安定するとリスクを取りにくくなりますね。自分も本業を完全にやめて家業に専念するリスクを取れない状態です。できる範囲でやっていきたいと思います。

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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