2010年01月23日
『デフレと円高の何が「悪」か』
上念 司著 2010年1月20日発行 777円(税込)
デフレと円高の何が「悪」か (光文社新書)
著者:上念司
販売元:光文社
発売日:2010-01-16
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著者は勝間和代さんの共同事業パートナーやブレーンをなさっている方のようです。勝間さんの民主党政権へのデフレ脱却政策の提言には著者が大きく関係されていたことが本書に書かれています。
本書で提唱されているインフレターゲティング政策については賛否両論があると思いますが、メッセージの明瞭さや内容のわかりやすさからすると、本書はよく書かれている本であると思います。本書の目次は以下の通りです。
- デフレと円高は恐ろしい---生活に与える諸影響
- 物価の動きをチェックせよ---デフレが進んだ理由
- 日本に無税国家が誕生する?---金融政策と金利のメカニズム
- 金ならある、心配するな---財政と財源を考え直す
- 歴史は繰り返す---昭和恐慌から学べ
- 今、やるべきことは何か---具体的な政策を実行せよ
本書はインフレターゲティング政策についての問題点や疑問点についてよく話題になることを、インフレターゲティング政策を肯定する立場から書かれており、非常にメッセージがはっきりしています。
前にも書きましたが、インフレターゲティング政策の本質は、貨幣を減価させることにより体制を軽く破壊し続けることだと思います。
体制が変わると損をする人もいますし、得をする人もいます。そのあたりによって立場がはっきり分かれやすいので、インフレターゲティング政策については対立的な議論になりやすいのかもしれません。
個人的には、少しずつ体制を変化させることは社会を適度に活性化させるので、人為的にマイルドなインフレを起こすことは望ましいと考えています。
金融を緩和することが体制側にとって好ましくない面もあることは、たとえばライブドアとフジテレビの一件を考えるとわかりやすいと思います。
ライブドアはもともとITバブルの終わり頃に上場して株式市場から数百億円の自己資本を調達しました。その自己資本を元にしてMSCBを発行して資金を調達し、ニッポン放送の株式を手に入れようとしたわけです。
そしてさらにフジテレビを引受先とするに第三者割り当て増資を行い、自己資本を厚くしました。実現はしませんでしたが、さらに厚くなった自己資本を元に借金などをしてソニーの買収まで考えていたようです。これらはいずれも金融が緩和的であった時期の出来事です。
昔は体制側に向かっていくときは命がけのことであったであろうと思いますが、金融技術の発展と金融緩和が組み合わさると、ライブドアの例からわかるように、無名の存在がゼロから数年で大きな力を得て体制を脅かしてしまいます。
お金の流動性が高まると社会の流動性も高まります。社会の流動性が高まることを社会が活性化するとみるか、それとも社会が不安定化するとみなすかは、立場によって違ってくることでしょう。
日本が今後どちらを選ぶかは国民全体の意思によると思いますが、それにはどのようなオプションが存在しているのかを多くの人が知る必要があると思います。
おそらく日本国民の多く、とくに若い方は現状に不満を持っている人が多いと思います。インフレターゲティング政策を採れば現状が変化するかもしれないとわかれば、その政策を支持する人は多いのではないでしょうか。
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この記事へのコメント
デフレ脱却に向けてこれからも応援よろしくお願いします。
上念
個人の活動が国に直接影響を与えるとは時代も大きく変わりつつあることを実感します。個人のレベルから国が変わると、本当の意味で国が変わるように思います。頑張ってください。
私は政策是非を新卒雇用状況に対してどうなのかという点で判断しています。
今の政権は新卒雇用口に介護を用意しているというニュアンスであり、これでは全く夢を持てないですね。
家業再生、大変なことと思います。
くれぐれも御身を大切に。
お書きの通り、現在の日本に欠けているのは若い人の希望です。若い人が希望を持てる社会にするのがよいと思いますが、リフレ政策はそのための一つの方法になるのではないかと思っています。いろいろと考え方はあるとは思いますが。
家業再生はやりすぎてしまうので、たしかに体を壊さないように気を付けないといけませんね。ご心配いただきありがとうございます。