2010年02月03日

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『7割は課長にさえなれません』4

城 繁幸著  2010年1月29日発行  735円(税込)

7割は課長にさえなれません (PHP新書)7割は課長にさえなれません (PHP新書)
著者:城 繁幸
販売元:PHP研究所
発売日:2010-01-16
おすすめ度:4.0
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著者は雇用問題や労働問題についての本を数多く書かれている方です。著者の本は一般向けに書かれているわかりやすいものが多いのですが、本書は身の回りにありそうな具体例が多く、とくに読みやすい本でした。

本書を読むと、現在の日本に活気や活力がないことは雇用問題も大きな理由になっていることがよくわかります。あるいは、雇用問題が根本的な原因になっているのかもしれません。本書の目次は以下の通りです。



  1. 年齢で人の価値が決まってしまう国
  2. 優秀な若者が離れていく国
  3. 弱者が食い物にされる国
  4. 雇用問題の正しいとらえ方
  5. 日本をあきらめる前に

本書の主な主張は、日本の停滞の理由が既得権益者である中高年の正社員を過度に優遇していることにあるということです。雇用問題は世代間格差の問題であることが本書のキモになっています。

著者はこの問題の解決策を労働市場の流動化に求めていますが、これには国民の多くの人々の意識が変化する必要がありそうです。著者が本書のようなわかりやすさを重視した本を書かれているのは、少しでも意識を変化させるきっかけになればよいと思われているのかもしれません。

一人一人の人的資本を株式会社として考えると、現在の日本は現金などを含めた資産をたくさん持っている成長性が低い会社に、継続的に公的資金を注入し続けているようなものです。

将来性のある有望な成長企業、つまり若者には資金が回っていない状態になっています。人的資本に対する配分の非効率さは、株式会社の資金配分の非効率さに通じるものがあります。

悪いニュースは、この問題は時間が経たないとなかなか解決しないことです。労働市場の流動性を高めることは、既得権益者にとっては自分と関係なければ総論賛成ですが、必ず自分と関係してくるので各論反対になってしまいます。

良いニュースは、この問題は時間が経てばほぼ必ずなくなることです。既得権益者の多くの方々が引退する時期になれば、既得権益者の数は自然に減少することでしょう。ただしそれが本質的な解決かどうかはわかりません。

解決方法がわかっているのに現実的に解決が困難な問題はありますが、日本の労働問題はその一つかもしれません。この問題の本質的な解決方法としては、若者が問題に関心を持って政治的に働きかけるしかないと思います。

本書のような本を読むと、中高年の既得権益者が悪く、弱者である若者が虐げられていると思ってしまいがちです。たしかにそのような面はあるのですが、現状は若者にもっと強くなるようにというシグナルなのかもしれません。

既得権益者から頭や体を使って権益を「奪う」くらいの強さがないと、上の世代の既得権益者も譲ろうにも譲れないという面もあるかもしれません。弱いものに自ら与える気はないけれども、弱いものが強くなって奪われる分には仕方ないと思うかもしれません。

弱者に富を与えてもそれを増やすことはできないかもしれませんが、強者に富を与えるとその富を有効利用して全体が活性化するはずです。

弱い男性が女性を口説き落とせないときに、なかなか身を任せてくれない女性を悪く思ってしまいがちですが、女性は自分という貴重な資産を与えようにも男性が弱ければ与えようがないわけです。

女性は自分から弱い男性には身を任せるわけにはいきませんが、その男性が強ければうまい具合に身を奪われるのは仕方ないと思うかもしれません。女性が男性に口説かれるというのは本質的にはそのようなもののはずです。

そのように考えると、本書から読み取るべきメッセージは若者が主体的にもっと強くなるべきであるということでしょう。若者が強くなれば、中高年者は仕方なく、そしてある程度の期待を持って道を譲るのではないでしょうか。



investmentbooks at 23:56│Comments(2)TrackBack(1)clip!本--日本経済 

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1. 7割は課長にさえなれません(城繁幸著 書評・感想)  [ blog50-1 ]   2010年02月07日 16:46
今年の昇進試験はかなり人数を絞るそうである。もうずいぶん前から減らすべきだとの共通認識があったけれども、年功制を維持したり、各人の思惑があったりしてなかなか減らすことができなかった。筆者の指摘を待つまでもなく、当社では課長になれない人が多くいる。それでも....

この記事へのコメント

1. Posted by sanomari   2010年02月07日 01:03
何度か立ち寄らせていただいています。
初コメント失礼します。

本を紹介しているサイトの中で、すっごくわかりやすくて
なおかつ
私の興味のある本を網羅していて

楽しく拝見させてもらっています。

この本、読んではいないのですが、タイトルできになっておりました。

このことについて、どのくらいの人がわかっていて会社員をやっているのか。

今、私も会社員ですが、周りの男性を見ていて、どう考えているのかなぁって思っていました。

私は女性で、日系のIT企業で働いていますので、
最初からそんなに昇進がどうという願望もなかったのですが、(やはりまだまだ男性優位です。)
現実問題、もう私たちの世代(20代半ば)は、みんなが役職につけるわけではなく、
天下り先だってなく・・・

人生を真剣に考えたほうがいいだろうという結論に至るわけです。

新書は読むとき読み、あまり読まないときは読まないですが、オススメの本のようですし、読んでみようかなと思いました!

ありがとうございました。

2. Posted by bestbook   2010年02月08日 00:31
sanomariさん、初コメントありがとうございます。

ブログをお読みいただき、そして御評価いただきありがとうございます。

おそらく本書の著者は、主に20代の若い方々に対して本書を書かれていると思います。最近の若い人たちは基本的に地に足がついてしっかりしていると思いますが、良い意味でもあるいは別の意味でもあきらめのようなものがあるように感じます。

日本を活性化するためには、若い人々が問題意識を持って主体的に一つの大きなカタマリとなって社会に働きかける必要があると思います。

sanomariさんはすでに問題意識をお持ちのようですが、本書を読まれるとさらに深めることができるかもしれません。そのような意味でも本書は新書で手軽に読めるのでおすすめです。

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
このブログについて
2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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