2010年02月17日

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『アホの壁』3

筒井 康隆著  2010年2月20日発行  714円(税込)

アホの壁 (新潮新書 350)
著者:筒井 康隆
販売元:新潮社
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まだ書影がないのですが、大ベストセラー『バカの壁』と同じ新潮新書の最新刊です。本書は『バカの壁』のタイトルを連想させること、著者が筒井康隆氏ということですぐに目を惹かれる本です。

バカの壁は400万部を越えるベストセラーになりましたが、はたして本書はどれくらい売れるのでしょうか?



本書の目次は以下の通りです。

  1. 人はなぜアホなことを言うのか
  2. 人はなぜアホなことをするのか
  3. 人はなぜアホな喧嘩をするのか
  4. 人はなぜアホな計画を立てるのか
  5. 人はなぜアホな戦争をするのか

『バカの壁』の著者は関東出身でしたが、本書の著者は関西出身なので、それぞれ言葉がうまく対応しています。

『バカの壁』は口述筆記による本ということもあり読みやすい本でしたが、本書はそれほど読みやすい本でもないかもしれません。

著者は昔からフロイトを中心とする古典的な精神分析論を作品のヒントにされていましたが、本書にもその影響が強く感じられます。本書で語られているところの「アホ」は多くの部分がフロイト的な精神分析論の「無意識」と言い換えることができると思います。

この場合の無意識は「アホ」という言葉で表現されているように、やや非合理的な扱いにくいものであるというニュアンスがあります。無意識についてはさまざまな考え方がありますが、本書で語られている無意識はやや否定的なニュアンスがあります。

最終章では無意識についてはやや肯定する面も語られてはいますが、本書に通底している毒気や皮肉の源泉としての無意識によるユーモアなどの価値として肯定されている部分が大きいようです。

著者の昔の小説は、無意識の病的な部分を独特の文体で巧みに表現されたものが多いのですが、本書で語られている無意識の概念も著者の昔の小説との一貫性があると思います。

無意識を本質的に非合理的で扱いにくいものとするならば、無意識を肯定的に関わる方法は著者のようにそれを観察してユーモラスに表現するしかないのかもしれません。

小説で表現されると面白いのですが、本書のようにエッセイ的に表現されるとやや重たい感じがするのは否めません。

『バカの壁』は理性による救いがありましたが、本書での「アホ」についての考察、つまり無意識観は突き詰めてもそれ自体にはあまり救いが感じられません。

もしも本書で語られていることに積極的な肯定を求めるとすると、本書の無意識観自体を変える必要があると思いますが、本書の無意識観を変化させると本書自体の面白さも失われてしまいます。

そのあたりの微妙な不安定さの感覚に著者の持ち味が出ていますが、どことなく読み手を不安にさせる本書が、どの程度売上げを伸ばすかは興味があるところです。



investmentbooks at 23:58│Comments(0)TrackBack(0)clip!本--その他 

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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