2010年02月22日
家業再生21
父に対するある疑いと確信は、父の経営判断やお客様との対応をうかがい知ることから抱くようになりました。
予約サイトを通じての値下げ販売のお客様は、定価よりも安い価格で宿泊されているのですが、実はかなり厳しいお客様です。そのお客様はフロントに対していろいろと直接クレームを言われたり、予約サイトで書き込みをされます。
父がそのようなお客様に対応するときは、ややきつめの口調になっていました。「不本意にも安く泊めている」のにクレームが多いので自然と悪い印象を持ってしまい、その印象がきつめの口調につながったようでした。
そのあたりの気持ちはわからないでもないのですが、お客様の口コミの内容を拝見するとお客様が立腹されても当然であり、ホテルの接客として通常は考えにくいようなことを父は言っていました。
設備投資についても、ボロボロと言っていいほど過去の設備が老朽化している部分があるにもかかわらず非常に消極的でした。それでも一応父なりに工夫はしていたようです。
従業員の人を解雇して自分で仕事をする、冷暖房はなるべく切る、備品はなるべく安いものを使うなどです。
工夫はしていましたが、すべてサービスのクオリティを落としながらの経費削減です。設備自体が時代の流れとともに下降トレンドにあるのに、さらに価値を下げる方向で「経営改善」をしていたわけです。
いろいろと経営や現場の事情を知るにつけ、父に対して思ったのは以下のようなことです。
「父は事業を潰そうとしている」
いろいろな「経営改善」の努力はしていましたし、自分の貯金を取り崩して損失を補填しきれなくなってからは金融機関での金策も綱渡りの状態で行っていました。従業員の方を解雇して自分の労働時間を増やしてもいました。
しかしながら父が行っていたことは、すべてがホテルの業績が悪くなる方向に突き進んでいました。家族に経営状態の悪化について話していなかったのも、経営が悪化する要因になっていたと思います。
もちろん父に会社を潰そうとしてるかどうかについて尋ねても、否定していたことでしょう。しかしながら言葉では否定しても、人間の本当に欲しているものは結果から理解する方がわかりやすいことがあります。
よりわかりやすく言い換えると、父は自分で自覚できる意識の上では事業を何とか継続していようとしていましたが、自分で意識できない部分では事業を潰そうとしていたように思われました。このことはお金についても同様で、結果からすると自分のお金がなくなる方向に向かっていました。
人間の行動の結果は、意識的に思っていることよりも、実は多くは潜在意識の働きによると思います。
父が商売やお金について否定的な思いを抱いていたのは、以前に書いた通りです。おそらく潜在意識の深いところにあるこれらの思いが、長年にわたり事業を潰す方向に作用していたのでしょう。
中小企業の経営は、その会社の社長の思い、より正確には潜在意識にあるものが反映されていることが多いと思います。その会社の経営状態を見れば、その会社の社長の心の底にあるものがよく分かります。
父の潜在意識がホテルの経営にそのように作用しているとすれば、問題はかなり深刻です。家族が関わろうとしても、潜在意識は何が何でも事業を潰さないといけないと思っているので、経営を改善させるようなことを提案したとしても、意識では適当な理由をつけてその提案を否定することを合理化し、何が何でも捨て去ろうとするでしょう。
最初は単なる疑いでしたが、父と話せば話すほどその仮説に対する確信は深くなりました。
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この記事へのコメント
今後、お父さんの気持ちがどう変化して行くのか、すごく楽しみです。
次回も期待しております。
家族にしか出来ないこと、逆に家族だから難しいこと、色々あると思いますが、お父さんの潜在意識を果たして書き換えることができるのか?
今後がすごく楽しみです!
私もいつも楽しみに読んでますよ!!
「楽しみ」という表現が適切か、ちょっと微妙ですが(汗)。
黙々と実行するその姿が、いつも励みになります。
私にとっては、このブログがいつの間にか書評参考サイトから“勇気付けられる媒体”になっています(笑)。もちろん、書評も楽しく拝読しているのですが!
ホテルの再生はやることだけなら難しくはないのですが、家業の場合家族の気持ちが大きく関係してくるので必要以上に難しい面があります。リアルタイムな部分と過去の部分を少しずつ書いて行きたいと思います。
>fuminchuさん
職業上どうしてもこのように考えてしまいます。身内の潜在意識は自分の潜在意識とも深いつながりがあることが多く、そのあたりも難しいところです。
>smoothさん
いつも楽しみにしてお読みいただきありがとうございます。ブログの記事は楽しんでいただけるのが一番です。お気遣いいただきありがとうございます。
>fujinoさん
家業再生の話は現在進行形の話なので、自分でも次の展開を楽しみにしています。もちろんうまくいかない可能性もあるのですが、それはそれで一つの経験と考えています。
いずれにしろやるべきことをできる範囲で実行するしかありません。
ブログを御評価いただきありがとうございます。書いている方も、書評より家業についての方が気持ちが入っているかもしれません。