2010年03月01日
家業再生22
前回は、父の潜在意識が自分の事業を潰したがっているのではないかと書きました。このことは真偽を証明できるような性質の問題ではありませんが、父の様子を見たり直接話したりすると、感覚的に伝わってくるものです。
もしも実際にそうだとすると、家業の再生は容易ではないことになります。会社の株は父が100%所有しており、ホテルの土地と建物の父の名義、そして社長も父であり実質的に経営に関与しているのは父だけだからです。会社は100%父を表しています。
少しでも関与するとすると、それなりの時間と精神的なエネルギーを使うことになるのは目に見えていたので、再生が可能かどうかについていろいろ考えました。可能でなければ、最初から「損切り」をするのが賢明です。
考えた末に出した結論は、「可能である」というものです。そのとき考えた可能である理由を書くと以下のようになります。
- 立地がよい
再生可能と考えた一番の決め手は立地です。場所は非常によいところにあります。ホテルの価値の一つに立地がありますが、街の中心部にあるのでさまざまな点で利便性があります。
- 建物がしっかりしている
設備はかなりの時代遅れになっていましたが、建物はお金をかけただけありしっかりしていました。壁も厚く隣の音はそれほど聞こえません。
- 母は商売に適性がある
母はホテルのビジネスを父に任せきりでした。経営や財務に対する知識はほとんどありませんが、父と違って本質的にビジネスが好きなように思いました。ビジネスが好きとは、創意工夫をして価値を創造し、お客様にたくさん来てもらって喜んでもらい、その結果として利益としてのお金が貯まるプロセスが好きということです。
- それまでほとんど設備投資や経営改善をしていない
逆説的ですが、それまでに設備投資や経営改善していないことは希望を抱かせました。その頃の稼働率は50%弱くらいだったともいますが、ポジティブに考えるとその状態でも稼働率は50%程度はあったわけです。
- ホテルビジネスにおける利益の構造
当時は年5000万円を切る売上げで、実質的に500万円程度の赤字でした。ホテルというビジネスは、旅客機などと同じで固定費が大きいのですが、変動費が小さいため、売上げが伸びることにより急速に利益がアップする構造になっています。たとえば1000万円の設備投資をしても、1年後に年商が1500万円増えていれば、一年で投資した分は取り戻せます。
以上、よいことばかりを書きましたが、もちろん不安要素もあります。
一番の問題はビジネスのすべてを象徴する父が事業に否定的であることですが、それら以外にも家族経営であること、借金の負担が大きいこと、従業員の方が高齢化していること、現場で中心になれる人物がいないことなどがあります。
何もしないと潰れるのは確実なので、事業を継続するのであれば誰かが何とかするしかありません。いろいろと考えてふと気が付くと、実は自分がやるかどうか次第であるという事実に思い当たり、知らぬ間に重荷を背負い込んでいたような感じでしばらく眠れぬ夜が続きました。
トラックバックURL
この記事へのコメント
ポジティブな面を考えると再生が可能に見えますが、リソースを切り替える中心が自分になるとなると、話が全然違ってきますね。
せつない!
励ましの御言葉ありがとうございます。お書きの通り、自分でやるとなると話が違ってきますね。
なかなかすっきりとはいきませんが、これが与えられた条件なので仕方ないと思っています。