2010年03月02日
家業再生23
いろいろと不安はありましたが、再生に関わることは決断できました。問題はどのような形で関与するかです。
ホテルは株式会社の形態でしたが、毎年赤字を垂れ流し続け、実質的に大幅な債務超過になっていたため、フローの面でもストックの面でも株式の実質的な価値はゼロです。
当時は株式市場の状態がよく、数年前に始めた株式投資の残高が投資金額の3倍くらいにはなっており、そこそこのキャピタルゲインがあったため、経済面で気分的な余裕がありました。
ホテルのもともとの資本金は1000万円でしたが、これを100%減資してもらい、自分の持ち株を売ってそのお金でホテルの増資をして100%株主となり、さらに同額の借り入れをして2000万円程度の設備投資を行うことも考えました。
そうすれば設備投資の額としては十分とは言えないまでも、そこそこのものにバリューアップすると考えました。また自分が100%株主になることは、父親の潜在意識が影響を与えているホテルの経営をガラリと変化させることもできるはずです。
しばらく迷ったのですが、考えた末、この案は見送ることにしました。それにはいくつか理由があります。
まずは自分が医療の仕事をすぐには辞めるつもりがなかったことです。この形を取れば、故郷に帰って毎日朝から晩までホテルの再生の仕事をしたくなってしまいますし、おそらくそうする必要があるはずです。しかしながら、仕事を辞める踏ん切りはつきませんでした。
このような場合、医者の仕事は良いような悪いような面があります。安定してそこそこの収入があるので、他の仕事に移るリスクを取りにくくなっています。逆にこのことを国の医療政策の点から考えると、医療の供給が安定して好ましいかもしれません。
またさらに気になったのは、この方法は株式会社の知識がない父親から会社を「乗っ取って」しまうことになることです。いくら親子といっても、知識のない父親から会社を「奪って」しまうことは好ましくありません。またもし父に相談したとしても、息子に家業を継がせたくないので反対したはずです。
当時は株式市場の状態が良かったので、心理的にも株式を売りにくかったということがあります。後付けになりますが、今から考えるとあのように売りにくい状態で逆に売る方がよかったのかもしれません。
いくつか理由を書きましたが、当時は「何となくそうする気がしなかった」というのが正直なところです。いきなり出資をするのは機が熟していなかったようです
「何となく」と書くといい加減なようですが、人間が「何となく」思っていることは結構重要で、おそらくその感覚に逆らっていたら、うまくいかなかったのではないかと今振り返ってみて思います。
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この記事へのコメント
「何となく」が重要という言葉になるほどと思う一方で、「何となく」と「惰性」の違いがよくわかりません。
何となく気分が乗らないからやらない、というのは単に潜在意識が古い習慣にしがみついているだけで、新しいことに挑戦するリスクをとりたがらないないだけのようにも思います。
でもそう考えると、じゃあ直感とか虫の知らせって何なんだという話にもなり、難しいです・・・。
(先生は考え抜かれた末に「なんとなく」この結論に至っているのでうまくいったのだと思いますが。)
稼業を継ぐのでは?と思っていました(^_^;)
本当はホテル再生という「仕事」を選びたいのではないでしょうか?
私ならば欲張りなので両方本業にしてしまいそうです。。。
今は「週末稼業」という形態になるのでしょうか…
いずれにせよ熱中できることが二つもあるのは
羨ましい限りです。
今後の展開も楽しみにしています!!
また、ガラリと変わることを喜ぶ人がいる一方それに反発する人もいるでしょう。
本業を持つことで副業を客観的に見ることもできるでしょう。
再生がらみは当事者でない方がよい気もします。もちろん「何となく」ですけれども
いつもお読みいただきありがとうございます。
ご指摘の通り、潜在意識が古い習慣にしがみついていたのかもしれませんね。家業再生については、「何をしたか」を書いていますが、裏返すと「何ができなかったか」ということでもあります。
仕事を辞めて家業に専念することは当時の自分にはできませんでしたし、実のところ今もできていません。
人間は自分の言動を正当化しようとするので、「何となく」と「惰性」の区別は難しいです。自分にもそのような要素はあると思います。日々反省するしかありません。ご指摘いただきありがとうございます。とての参考になります。
>fuminchuさん
ホテル再生は楽しいのですが、再生後に事業拡大するため支店を作って数を増やしていくかどうかまでは今のところ何とも言えません。そのあたりになると人との巡り合わせがポイントになるように思います。
しばらくは今の形で関わり続けることになると思います。
お書きいただいている通り、やるべきことがあるのは幸せなことです。頑張ってよい結果につながるようにしたいと思います。ありがとうございます。
>マリンゾウさん
たしかに会社は生身の人間が数多く関わっている生き物なので、お書きの通りどのように関係するかは難しい問題です。
会社がその状態であるということは、その状態であることを望む多くの人々によってそうなっているからですね。現在苦労しているのも、そのような部分が大きいです。
現在は当事者であるようなないような中途半端な状態ですが、完全に当事者になってしまうと熱くなりすぎてしまうかもしれません。そのような意味においては今くらいの距離感がよいのかもしれませんね。
時が来れば、また新たな展開があるかもしれません。